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音楽ライター・オラシオの
「りんごと音楽」
~ りんごにまつわるエトセトラ ~

vol.45 気になるサイズ

先日、「盛り」が良いことで評判の高いラーメン屋さんにひさしぶりに行ってみました。すると、心なしか出てきたラーメンがサイズダウンしているように感じられたんですよね。これ、最近はすっかり「あるある」になってしまいました。飲食店は絶対に調理のための燃料と料理に使う材料が必要な場所ですから、今はほんとうに運営が大変だと思います。頭が下がりますね。こんなご時世なので、サイズダウンにがっかりするよりも少し切なくなってしまったのでした。

ラーメンのサイズダウンの遠因になっている国ロシアは世界最大の面積を誇る国です。ちょっと自分の話になってしまいますが、高校進学で調子に乗って進学校なんかに入ってしまったら、まわりは全員自分と同レベルかそれより上の学力の持ち主ばかりで、最初のテストでそれを思い知らされて勉強するのが嫌になってしまいました。授業も全然聴かなくなって、赤点ばかり。完全な落ちこぼれです。でも一つだけ熱心に学んでいた科目が地理でした。

今回ご紹介する品種その1ヒメリンゴ。この品種の特徴は?
答えは最後のほうに書いてあります
※写真提供:杉山芬(かおる)さん 『青森県のりんご』著者

地理を楽しく学ぶコツは、都道府県名/県庁所在地名とか国名/首都名などコンビネーションを作る、または、いろんな「一番」を調べて暗記することかなと思います。当時のクラスメートに同じく地理好きがいて(彼は僕よりも全然成績が良かったですが)、お互い地理クイズを出し合って楽しんだ思い出がよみがえります。その「一番クイズ」の最初の一歩がロシア=世界で一番広い国、というわけです。

ロシアの面積一位は長らく不動ですが、同じく最長不倒だと思われていた中国=人口世界一、はちょっと危うくなっています。10年くらいの間にインドが抜くかもと言われています。サイズが一番ネタで他にもいろいろ挙げてみましょう。

世界で一番狭い国はバチカン市国です。一番広いのはロシアですが、二番目については意外と即答できる人は少ないかも。カナダです。日本は61位らしい。日本で一番広い都道府県はダントツで北海道ですが、では二番目は? これはお隣の岩手県です。また、日本で一番狭い自治体は富山県の舟橋村だそうです。ちなみに、この村には鉄道駅併設の村立図書館があって、いつか行きたいと思っています。僕が高校卒業まで住んでいた大阪府藤井寺市は、市の中では「面積が狭いトップ10」に入る小さな自治体でした。

ヴィブラフォン奏者ロイ・エアーズのジャズファンク神曲。ビリー・コブハム(右チャンネル)、デイヴィッド・リーのツイン・ドラムにカッティング・ギターが炸裂

音楽とサイズというテーマは少し難しそうです。パッと思いつくのは「ダイナミクス」というものです。かんたんに言うと、それぞれの音の音量の大きい小さいのコントロールということです。俗に音楽を構成する要素は3つあると言われています。「メロディ」「ハーモニー」「リズム」です。ところが僕が尊敬するドラマー、ビリー・コブハムはそこにダイナミクスを加えた4要素とすべきだ、と言っていました。確かに最初の3つだけでは音楽がものすごく無表情で平板なものになりそうですよね。

音の強弱のコントロールは、確かな技術の証でもあります。楽器をおぼえたては、楽譜通りの音を弾くのに精いっぱいで、強弱の調整ができません。たいていはやや強めの「うるさい」音になってしまいます。たとえば、歌がうまいイコール「声がよく響く」というイメージがありますが、歌でも楽器でもほんとうに難しいのは弱音で演奏することです。

ワルシャワ、宮崎、東京を拠点に活躍するコンポーザー・ピアニスト横山起朗のアルバム。弱音のアート

小さな音で演奏するということは、身体が完全にコントロールできていないとできないものなのです。逆に、弱音でちゃんと演奏できる人はすごくきれいで力強い音も出せます。強く大きい音から弱く静かな音へのコントロールが自在にできるようになると、演奏している音楽に起伏と演奏者の感情が宿り、人を感動させる「何か」が発生します。

音楽は、ただそこにあるだけでは人の心を動かしたりする力を持ちません。こんなことを書くといろんなところから怒られそうですが、その意味で近年の「駅ピアノ」ブームにはあまり共感できません。僕が聴いている限り、駅で演奏している人で、コントロールされた弱音で弾ける人がほとんどいないのです。せっかくの音楽が、ちょっとノイズに近いものになってしまっているように感じられます。もちろん「開かれた場」としての音楽の役割も理解していますが。単に僕が偏屈なだけかもしれません。

スラップ・ベース(日本ではチョッパーとも言う)の発明者ラリー・グラハムの名曲POW。もともとはドラムがいないのをカバーするための奏法でした

ダイナミクス・コントロールの究極と言えば、ドラムの「ゴースト・ノート」かもしれません。これは聞こえるか聞こえないかの微妙なヴォリュームで奏でられる音のことで、スティックでスネアドラムやハイハットなどをそっと触れるのがコツ。これがあるのとないのとではドラムのニュアンスがまったく変わってくるのです。名ドラマーと言われる人は全員このゴースト・ノートの名手です。また、ジャズのウッド・ベースやファンクのスラップ・ベース、カッティング・ギターなどでもゴースト・ノート的な奏法が大きな効果を発揮します。

リンゴの実に例えると実が大きな品種は大きく響く音、小さな品種は弱音やゴースト・ノートだと言えるかもしれません。ここで地理の「一番クイズ」ではないですが、リンゴの品種の大小それぞれをおぼえてみましょう。

今回ご紹介する品種その2スタークジャンボ。
この品種の特徴はすぐ下で

量産品種で最も小さいサイズのものは、前回写真でご紹介した「アルプス乙女」だと思っていたのですが、ヒメリンゴという品種が最少だそうです。アルプス乙女にも姫リンゴという愛称があるそうなのでちょっとややこしいですね。大きい品種は名前もスケールが大きい「世界一」でしょうか?

ところが上には上がいました。2005年に弘前で記録された1個1.8kgの個体があるそうです。こちらの品種は「スタークジャンボ」というそう。アメリカ生まれの加工用品種とのこと。ちなみにやはり「世界」が入っている「新世界」はそんなに大きいわけではないようです。あらためて、いろんな品種があるなあと感じた次第でございます。

2022/6/21

Profile

オラシオ

ポーランドジャズをこよなく愛する大阪出身の音楽ライター。現在は青森市在住。

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