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第7回 生食用リンゴの消費

 米国ワシントン州プルマンで、世界のリンゴ情勢を分析しているベルローズ社が発刊する年報「World Apple Review 2018 Edition」の中から「生食用リンゴの消費」に関する論評を要約して紹介する。

●生食用リンゴの1人当たり年間消費量―日本は最低レベル―

 生食用リンゴの1人当たり年間消費量の動向は、世界のリンゴ産業が収益をもたらし持続するための最大の要因である。
 生食用リンゴは生産者、選果出荷業者、流通業者の供給サイドと、需要サイドの卸売業者、小売業者、輸送業者、マーケティング活動関係者などの両者に対して一貫した最も高い収益を生みだしている。
 しかし、生食用リンゴの1人当たり年間消費量に関する信頼すべき資料は入手できない。World Apple Reviewでは独自の方法で、主要国別、地域別に生食用リンゴの1人当たり年間消費量を算出している。

 生食用リンゴの消費量は次のように算出する。

生食用リンゴの消費量=(リンゴ生産量+生食用リンゴ輸入量)-(生食用リンゴ輸出量+加工向けリンゴ量+商品化できないリンゴ量)

 生食用リンゴの1人当たり年間消費量はその年の人口で割ったものである。この算出方法は貯蔵中の重量ロス、流通過程での品質劣化、消費の食べ残しなどを含んでいないので、実際の消費量よりたぶん多くなるであろう。しかし、この算出法は国ごとのある期間の比較には有効となるはずである。

●リンゴ生産国における生食用リンゴの1人当たり年間消費量

 リンゴ生産国35か国の生食用リンゴの1人当たり消費量(2015~2017年の平均)は18.27㎏で約20年前に比べると58.3%増加している。中国を除く34か国は10.9㎏で2.8%増にとどまっている(表1)。
 西ヨーロッパの生食用リンゴの1人当たり年間消費量は13.35㎏で20.1%減少しており、この地域での落ち込みは大きい。中国は116.2%増の27.37㎏で最大の伸びである。
 日本は16.3%減の5.04㎏で、先進国の中では最低レベルである。台湾(注:リンゴを生産しているが統計値はない)は7.27㎏になっている。

(表1)リンゴ生産国における生食用リンゴの1人当たり消費量

  2001-03年平均
(kg)
2015-17年平均
(kg)
増加率
(%)
35か国 11.54 18.27 58.3
中国を除く34か国 10.61 10.91 2.8

●リンゴ非生産国における生食用リンゴの1人当たり消費量

 北アジア及び中東の生食用リンゴの1人当たりの年間消費量(2014~2016年の平均)は先進国のそれに近づいているが、その他の地域では1.5㎏台で推移している(表2)。
 東アジアと中東の23か国の人口を合わせると全世界の人口の11%を占める8億人を超える。これらの国々は生食用リンゴの大きな輸出市場になる可能性がある。

(表2)リンゴ非生産国における生食用リンゴの1人当たり消費量

  2002-04年平均
(kg)
2014-16年平均
(kg)
増加率
(%)
アフリカ 0.24 0.34 41.6
北アジア 7.75 11.94 54.0
東南アジア 0.82 0.93 13.4
中東 7.24 7.75 7.0
中米 1.12 1.37 22.3
中南米 1.06 1.49 40.6
南太平洋 0.85 0.98 15.3

●生食用リンゴ消費拡大の問題点

 多くの先進国、特に西ヨーロッパでの生食用リンゴの需要は停滞もしくは減少している。
 生食用リンゴと大きく競合するのは、コンビニ、自販機に絶えず品目を変えて登場するスナック菓子類である。至るところで手に入るスナック菓子類は魅力的である。
 低所得層の消費者は、簡単に手に入るスナック菓子類よりリンゴの方が高価であると認識している。
 一方、高所得の消費者の多くは、自分の好むリンゴ品種は高価格でも苦痛を感じないようである。消費者は裕福になるにつれて、新しい熱帯果実や珍しい果実を求めるようになり、リンゴ離れが起きている。

「ふじ」と「王林」

(2018/7/7)

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プロフィール

一木 茂

元青森県りんご試験場長。現在はりんごについて広めるべく、筆を執る。

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