第1回 リンゴ主要生産国のリンゴ産業国際競争力ランキング ~日本は7位~
米国ワシントン州プルマンにあるベルローズ社が毎年発行するWorld Apple review には、その年度の主要リンゴ生産国のリンゴ産業国際競争力ランキングが掲載されている。
国際競争力の評価基準は、リンゴ生産に直接関連する生産性部門6項目、リンゴ産業が発展するのに必要なインフラ及びインプット部門9項目、直接的にはコントロールできない要因である金融など市場環境8項目、合計23項目を設置している(表1)。
(表1)国際競争力の評価基準、2017年
生産性部門 | |
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① | 生産量の増減率 2008-10年~2014-16年 |
② | 生産量の最小年と最大年の較差 2006-2016年 |
③ | 未結果樹面積率 2016年 |
④ | 生産量に占める新品種の割合 |
⑤ | 栽培密度(樹数/ha) |
⑥ | 平均単収 2014-16(t/ha) |
インフラ及びインプット部門 | |
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⑦ | 貯蔵施設 |
⑧ | 最新式選果・荷造施設 |
⑨ | 流通の効率 |
⑩ | 市場調査・消費宣伝・販売などの活動 |
⑪ | 土地利用 |
⑫ | 水利 |
⑬ | 労働事情 |
⑭ | 投資の難易度 |
⑮ | 生産費 |
金融及び市場環境 | |
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⑯ | 長期金利 2017年 |
⑰ | インフレ率 2017年 |
⑱ | 為替レート 2016年(2001-2005年対比) |
⑲ | 知的財産権の保護 |
⑳ | 品質保証 |
㉑ | 生産量に占める生果輸出割合 2014-2016年 |
㉒ | 輸出平均価格 2014-16年(米ドル/t) |
㉓ | 市場への平均距離 |
評価基準の各項目に1点から10点の要点を与え、その合計点によりランク付けをしている。最高点は230点になる。
リンゴ主要生産国のリンゴ産業国際競争力の総合ランキング及び部門別ランキングの20位までを示した(表2)。
(表2)主要リンゴ生産国のリンゴ産業国際競争力ランキング、2017年
ランキング | 総合ランキング | 部門別ランキング | |||
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2017年 | 2016年 | 生産性 | インフラ及びインプット | 金融及び市場環境 | |
1 | 1 | ニュージーランド | 韓国 | チリ | オランダ |
2 | 3 | 米国 | ベルギー | 米国 | 日本 |
3 | 2 | チリ | イタリア | ニュージーランド | ベルギー |
4 | 10 | オランダ | ニュージーランド | カナダ | フランス |
5 | 8 | ベルギー | 南アフリカ | 南アフリカ | イタリア |
6 | 4 | イタリア | オーストリア | ブラジル | 韓国 |
7 | 7 | 日本 | ドイツ | フランス | オーストリア |
8 | 6 | 韓国 | オランダ | アルゼンチン | ドイツ |
9 | 8 | オーストリア | 米国 | オーストリア | 英国 |
10 | 5 | フランス | 中国 | イタリア | ニュージーランド |
11 | 11 | カナダ | 英国 | トルコ | カナダ |
12 | 12 | ドイツ | 日本 | 日本 | スロバキア |
13 | 13 | 南アフリカ | チリ | 韓国 | スロベニア |
14 | 14 | 英国 | フランス | ベルギー | 米国 |
15 | 15 | オーストラリア | ロシア | オランダ | スペイン |
16 | 16 | スペイン | オーストラリア | オーストラリア | オーストラリア |
17 | 20 | ポーランド | ブラジル | ドイツ | チリ |
18 | 18 | 中国 | ポルトガル | スペイン | セルビア |
19 | 22 | アルゼンチン | カナダ | 英国 | ポーランド |
20 | 19 | ポルトガル | トルコ | 中国 | ポルトガル |
トップはニュージーランドで171点(100点満点にすると74点)、2位は米国で165点、3位はチリで162点であった。前年のランキングと大きな変化はないが、オランダが10位から4位とランクを上げ、フランスは5位から10位とランクを下げた。総合ランキングが高い国は、部門別ランキングでも高い傾向にある。
日本の総合ランキングは前年と同様に7位である。部門別では、生産性が12位、インフラ及びインプットが12位、金融及び市場環境では2位である。
日本の年次別総合ランキングは1995年9位、2005年9位、2015年9位であったが、この2年間は7位をキープしている。
World Apple review-2017には、生産部門6項目(表1.①~⑥)だけを数値化している。
- ① 2014-16年の3ヶ年平均に比べると、日本は0.7%しか増加していない。これは世界水準よりはるかに低い。
- ② 日本のリンゴ豊作年と不作年の較差は1.37%で、較差の少ないことでは世界のトップクラスである。
- ③ 未結果樹面積率は、その国のリンゴ生産が明るいかどうかの基準になる。生産を維持する最低レベルは10%であるが、日本は5.5%である。
- ④ 1990年代に導入された品種を新品種としている。生産量に占める新品種の割合の高い国は、ニュージーランドの80.5%、韓国の77.0%、中国の72.8%、日本の66.7%が上げられる。
- ⑤ 日本の1ha当たりの栽培本数は1,130本で、ほぼ世界の水準である。ヨーロッパは栽植本数が多くベルギーは3,286本、オランダは2,989本である。
- ⑥ 平均単収は、リンゴの生産性を表す最大の尺度である。世界の平均は1ha当たり24.0tであるが、最大なニュージーランドの62.0tで群を抜いている。イタリアは46.2tである。日本は20.9t、韓国は21.1t、中国は21.4tである。
現在、日本のリンゴ産業国際競争力が7位にとどまっているのは、単収が世界水準より低いことが最大の要因ではないかと筆者は考えている。
(2017/11/18)