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Vol.24 --- クランブル・オ・ポム in Paris

 パリはカフェ文化が華やかですが、サロン・ド・テも負けてはいません。特に、おいしいお菓子を楽しむなら、断然、カフェよりもサロン・ド・テがおすすめです。パリには名物サロン・ド・テと人気の店が何軒かありますが、「ル・ロワール・ダン・ラ・テイエール」もそのうちの一軒。

パリの人気観光地、マレ地区にあるサロンドテ、ル・ロワール・ダン・ラ・テイエール。いつも、大勢の人々で賑わっています。
パリの人気観光地、マレ地区にあるサロンドテ、ル・ロワール・ダン・ラ・テイエール。いつも、大勢の人々で賑わっています。

 パリの観光エリアとして人気のマレ地区。ここは、古きよき時代のパリの面影が強く残る、魅力的な小道が多い界隈です。この一隅に、1996年にオープンした「ル・ロワール・ダン・ラ・テイエール」があります。店名を直訳すると、“ティーポットの中のヤマネ”。「不思議の国のアリス」の“気狂いのお茶会”に登場するワンシーンから店名をつけたそうです。
 店内は、アンティークやヴィンテージのソファやテーブルが賑やかに置かれたレトロなしつらえで、お店というより友人宅の雰囲気。いかにも居心地よさそうなサロンの一隅に、大きなお菓子がずらりと並んで置かれています。
 様々なタルトやクラフティ、チョコレートケーキなどが毎日10種ほども並んで大人気。ティータイムとなれば店の外まで長蛇の列ができます。

毎日10種ほどのお菓子がずらり。夕方遅くには、あらかた売り切れてしまいます。りんごのクランブルは、冬場は毎日作る人気アイテム。
毎日10種ほどのお菓子がずらり。夕方遅くには、あらかた売り切れてしまいます。りんごのクランブルは、冬場は毎日作る人気アイテム。

 この店の代表お菓子は、メレンゲをこんもりかぶせたタルト・オ・シトロン(レモンタルト)ですが、冬になると登場するクランブル・オ・ポム(りんごのクランブル)も人気アイテム。
 クランブルとは、クッキー生地を手でボロボロにして焼いたもの。そのままでもおいしいですが、スライスしたりんごと重ねて焼くスタイルが一般的です。オーヴンから出すと、こんがり焼きあがったクランブルはサクサクと香ばしい甘さで、その下に隠れたりんごは、ジューシーでとろけるよう。甘酸っぱい風味がクランブルの甘さと絶妙な相性をみせます。

りんごのクランブル。りんごのスライスの上にクッキー生地をのせてオーヴンで焼く、素朴なお菓子。濃厚で酸味が効いた生クリームを添えていただきます。
りんごのクランブル。りんごのスライスの上にクッキー生地をのせてオーヴンで焼く、素朴なお菓子。濃厚で酸味が効いた生クリームを添えていただきます。

 そして、りんごのクランブルをより一層おいしくしてくれる名脇役が、生クリームです。日本の生クリームよりもずっとモッタリしていて軽い酸味が特徴的。このコクと酸味が、クランブル&りんごと好相性で、このりんごのお菓子の魅力をぐっと引き立ててくれます。
 プレーンタイプのほか、キャラメルやシナモンなどのスパイスをりんごに加えたクランブルが登場する日もあり、今日のりんごのクランブルはどんなかな?とワクワクしながら店の扉をくぐるのも楽しいものです。

(2018/12/19)

加納 雪乃
Yukino Kano

神奈川県出身 パリ在住。
専門はフランスの食文化、バレエ。
サラリーマン時代に、95~97年、パリ事務所の駐在員として初めてフランスに滞在。 フランスの食文化の魅力に感動し、その魅力を広く伝えたいと思うようになり、帰国後しばらくしてから退社。 改めて自分で渡仏し、2000年からライターとして活躍している。
著書:「パリオペラ座バレエと街歩き」「パリ スウィーツの話」(ともに集英社 be文庫にて発売中)

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