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Vol.2 --- リンゴを使ったフランス菓子

 フランスのパティスリー(お菓子屋さん)で、一番人気なのが、タルト・オ・フリュイ(フルーツ・タルト)。四季を通じて、旬の果物をふんだんに使ったタルトが、パティスリーのウィンドーを賑わす。
 中でもリンゴのタルト”タルト・オ・ポム(Tarte aux pommes)“は、年間を通して店頭に並ぶ、定番タルトだ。ホロホロとした食感の練り生地や、ハラハラサクサクと口の中で崩れる折り生地に、櫛形やスライスした生リンゴをたっぷり載せて焼きあげる。櫛形のリンゴの場合、あらかじめバターと砂糖でさっと焼いてから生地に乗せることも。ヴァニラやラムの香りを加えることもある。

リンゴがたっぷり使われたタルト。直径10cm
リンゴがたっぷり使われたタルト。直径10cm

 その”たっぷり”ぶりには、驚くだろう。
 上の写真は、直径10センチほどのリンゴタルト。
 焼く前は、スライスリンゴを高さ8センチほどまで積み重ねてある。タルトひとつにつき、実にリンゴ2個を使う。

焼き上げる前のリンゴタルト
焼き上げる前のリンゴタルト

 上の写真は、お菓子教室で作ったリンゴタルト。つめられるだけ、乗せられるだけ、隙間なくリンゴを重ねていく。やきあがると下の写真のようになる。

焼いた後。かなりのボリューム!
焼いた後。かなりのボリューム!

 シンプルなリンゴのタルトは、パティスリーだけでなくブーランジュリー(パン屋さん)でも定番お菓子。下の写真は、ザクザクきったリンゴを、折生地にのせて、手でひょいひょいと周りを持ち上げて高さをつくり、バターとシナモン風味を加えて高温でさっと焼き上げたもの。シンプルながら、そのおいしさが伝わってくるいでたちだ。

ブーランジュリーのリンゴタルト ブーランジュリーのリンゴタルト
ブーランジュリーのリンゴタルト

 そして、レストランやビストロ、カフェで愛されるシンプルなリンゴのお菓子、タルト・タタン。櫛形のリンゴをぎっしり敷いた型の上に折り生地や練り生地をかぶせて焼き上げ、ひっくり返して、リンゴが下で生地が上、という仕立てにしたもの。ほんのり温かみが残るところに、ひんやりした酸味の効いた濃厚生クリームを添えていただく。
 フランスで最もポピュラーな果物リンゴで作れるお菓子は、どれもシンプルで、リンゴ自体のおいしさをたっぷり満喫できるものばかりだ。

タルト・タタンはいまやフランス菓子の代表格
タルト・タタンはいまやフランス菓子の代表格

(2012/8/17)

加納 雪乃
Yukino Kano

神奈川県出身 パリ在住。
専門はフランスの食文化、バレエ。
サラリーマン時代に、95~97年、パリ事務所の駐在員として初めてフランスに滞在。 フランスの食文化の魅力に感動し、その魅力を広く伝えたいと思うようになり、帰国後しばらくしてから退社。 改めて自分で渡仏し、2000年からライターとして活躍している。
著書:「パリオペラ座バレエと街歩き」「パリ スウィーツの話」(ともに集英社 be文庫にて発売中)

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