Vol.21 --- ホテル「ル・ムーリス」のリンゴスイーツ
フランスでは、リンゴは、お菓子の世界でもっとも利用されている果物です。
シンプルなリンゴタルト、リンゴが下で生地が上になったタルト・タタン。リンゴのコンポートをパイ生地で閉じ込めたショソン・オ・ポムなどは、パン屋さんやお菓子屋さんの定番アイテムです。
レストランでもリンゴを使ったお菓子は人気ですが、今、パリでもっとも注目されている若手実力派のパティシエが、とても美しく独創的なリンゴのお菓子を作っていて大きな注目を集めています。
パリを代表する老舗名門ホテル、「ル・ムーリス」。このラグジュアリーホテルのシェフ・パティシエ、セドリック・グロレは、様々な果物の形を精巧に模したお菓子作りが得意。モモ、サクランボ、レモン、イチジク、アンズなどに加えて、リンゴも、赤リンゴと青リンゴが、このフルーツコレクションにラインナップされています。
極薄のホワイトチョコレートで形づくられた、赤と緑のつやつやグラサージュを施された可愛らしいリンゴ。ナイフをそっと当てると、薄いチョコレートの殻がパリンと割れ、中から、クリームやリンゴ果肉が流れ出てきます。
赤リンゴの中身は、“ロワイヤル・ガラ”リンゴの果肉をレモンとバラの香りを付けてコンポートにしたものと、このリンゴの果汁とバラの香りで味をつけた、ホワイトチョコレートと生クリームのガナッシュ。緑リンゴの中身は、“グラニー・スミス”リンゴの果肉にディルの香りを付けたコンポートと、同じリンゴの果汁を加えたホワイトチョコレートと生クリームのガナッシュです。
どちらのコンポートもごく軽い加熱で、果肉のフレッシュ感を残していて、香り高く食感も楽しめる、とてもチャーミングなお菓子です。
このリンゴをタルトに仕立てたお菓子もあり、可愛らしい形でこちらも人気です。
さらに、極薄にスライスした赤リンゴを花びらのようにデザインしたリンゴタルトも秀逸。タルト生地の中は、アーモンドクリームと青リンゴのコンポート。上部全体を赤リンゴのスライスで美しく飾り、溶かしバターを塗ってさっと表面をオーブンで焼いたものです。
高級ホテルのティータイムに提供されるにふさわしい、リンゴの愛らしい形や美しい色の魅力を見事に表現した、オート・クチュール的なリンゴのお菓子たちです。
(2017/12/22)