Vol.20 --- シードル街道
ワイン大国フランスには、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュ、アルザスといった様々なワイン銘醸地に、“ワイン街道”が整備されています。これらの街道にそってドライブを楽しみながら、ワイン生産者のもとを訪ねて試飲や購入をするフランス人は多く、観光プランとしても充実しています。
フランス北西部のノルマンディ地方は、ワイン文化こそありませんが、フランスきってのシードル生産地。その中心地オージュ地域には、ワイン街道ならぬ“シードル街道”があるのです。
![シードル街道中心村のひとつ、ブーヴロン・アン・オージュ。美しい村として人気。/シードル農家の入り口に掲げられた看板/農家製シードル](/play/france/images/020/france20j.jpg)
AOC(原産地呼称統制)という、産地の魅力を生かした優れた食品に与えられる称号を得ている、ペイ・ドージュ地域のシードル。このシードルが生産されるオージュ地域の中心地にある、カンブルメールやブーヴロン・アン・オージュというこぢんまりとした可愛らしい村々が拠点です。
![春から夏にかけて、リンゴ畑では草を食む牛の姿も多く見られる](/play/france/images/020/france20f.jpg)
これらの村の周囲に点在する20軒ほどのリンゴ農家&シードルやカルヴァドスの生産者の家をつなぐような形で、40kmに渡る街道が整備されています。街道には、“Route de Cidre(シードル街道)”という看板が随所に設置されて、車で訪れる観光客を誘導。リンゴ農家の敷地入り口には、ここがリンゴ栽培家&シードル生産者の農家、というのを示す“Cru de Cambremer(カンブルメールの銘醸)”という看板も出ていて、初めてこの地を訪ねる人々がスムーズに街道ドライブを楽しめるような工夫もされています。
![シードル街道の看板](/play/france/images/020/france20a.jpg)
http://www.larouteducidre.fr
街道にそって広大なリンゴ畑が広がり、春には一面が薄いピンクで覆われ、秋には赤いリンゴがびっしり。また、この地方の伝統的な館や城館なども多く残っており、風光明媚なドライブを楽しめます。
![春や秋のリンゴ畑](/play/france/images/020/france20h02.jpg)
各農家では、シードルやカルヴァドス、ポモーなどの試飲&販売はもちろん、リンゴ畑を散策したり、カルヴァドスの蒸留器やカーヴなどの見学も可能。カンブルメールでは、毎年4月末〜5月初めに、シードルやカマンベールチーズなどノルマンディ地方が誇るAOC食材を主役にしたお祭りがあり、10月にはシードルが主役のシードル祭りも開催され、生産者たちも勢ぞろいし、多くの人々で賑わいます。
![シードル・アルマニャック農家。カーヴの見学や試飲、購入ができる。](/play/france/images/020/france20e03.jpg)
![春と秋の祭の風景](/play/france/images/020/france20i.jpg)
土地の食べ物と飲み物の相性は最高、と言われるフランスですが、ペイ・オージュ地域も例外ではありません。シードルと、この地域の牛乳から作られる特産チーズ、ポン・レヴェックの相性は抜群。祭りではもちろんですが、カンブルメールやブーヴロン・アン・オージュのレストランでも、ぜひ味わいたい組み合わせです。
![シードルを使った料理本と、リンゴのデザートの料理本](/play/france/images/020/france20k02.jpg)
二つの村には、ミシュラン星付きのレストランやカジュアルな家庭料理を楽しませてくれるビストロが幾つかあり、ノルマンディ地方の美味を満喫できます。ブーヴロン・アン・オージュにはこの地方の観光局があり、併設ブティックではシードルやカルヴァドスを初め、カルヴァドスが香るミルクジャムやリンゴのジュレなどの特産品も充実しているので、ぜひ立ち寄ってみましょう。
![ブヴロン観光局にあるショップコーナー。](/play/france/images/020/france20d04.jpg)
シードルやカルヴァドスのほかに、リンゴやカルヴァドスを使った飴やジャム、
リキュールなども豊富に揃う。
リンゴの魅力が満載の旅を楽しめる“シードル街道”。この地方に観光促進にも一役買っている、魅力的なアイディアです。
(2017/4/1)