Vol.13 --- 日本人シェフの感性が光るリンゴづくしのレストラン
2003年にオープンした「ポムズ」は、リンゴをテーマにしたレストラン&食材店だ。
「我々フランス人にとってリンゴの木は、日本人にとっての桜の木のようなもの。とても大切に思い愛情を感じる、国の象徴的な農作物なのです」と語る、オーナーのダニエル・ダイアンさん。フランス人が大好きなリンゴの魅力をたっぷり披露したい、と「ポンズ」をオープンさせた。
パリ中心地に位置する店は、350㎡の広さ。地上階はブティックで、旬のリンゴをはじめ、シードル、カルヴァドス、ポモーといったリンゴのお酒、リンゴジュース、リンゴのジャムなどが種類豊富に並ぶ。
店で扱うリンゴは年間を通して約100種。フランスには、食用だけで3,000種ものリンゴが存在し、毎年1〜2種の新種が生まれ、同時に消える品種もあるそうだ。
フランス全土ほぼどこでも栽培されるが、唯一、ニースあたりの南東部だけが例外だそう。
地下と上階はレストラン。パリらしいシックな造りの空間で、上階はパリの町を眺めながら、地下は風情ある石造りのカーヴで、リンゴをたっぷり使った料理やお菓子を楽しめる。
シェフは日本人の半田健一さん。「日本人はシュクレサレ(甘辛)な料理の味に慣れていますが、フランス料理は甘味を料理に入れることが少ない。甘すぎる、と言われないよう、リンゴの味をバランスよく料理に組み込むようにしています」と言う半田シェフ。
料理のレシピは、多種多様なリンゴの個性を知り尽くしたダニエルさんと一緒に開発。
身がしまって酸味と甘味のバランスのよいリンゴ【リュビネット】はカボチャのスープの引き立て役に。
薄くカットしたリンゴを重ねたミルフイユには、きれいな酸味が魅力のリンゴ【アリアンヌ】を利用。
また、タラをシードルで軽く煮込んで繊細な味を表現したり、牛肉のポワレには定番のポルト酒のソースではなくリンゴのお酒ポモーを煮詰めたソースを添えるなど、様々な形でリンゴの美味しさを表現している。
使う食材は、パリの名食材店やブルターニュ地方の高名な野菜農家のものなどを厳選。上質な食材にリンゴという個性を合わせて丁寧に作られた美しい料理に、舌の肥えたパリジャンたちも納得。ミシュランレストランガイドでは、コストパフォーマンスのよい美味しいレストラン、という評価を得ている。
ドリンクは、ワインも用意してあるが、昼は特に、アルコール度数が低いシードルが大人気。ノルマンディやブルターニュ、バスクといったフランスのシードル産地から選りすぐられた様々なシードルの味比べを是非楽しみたい。料理に合わせて、3種のシードルを試飲できるドリンクコースも人気だ。
リンゴの魅力的を多角的に楽しめる「ポンズ」。
訪ねれば、今まで知らなかったリンゴの美味しさをたくさん発見できること請け合いだ。
(2014/10/14)