Vol.14 --- 腕利きシェフ自慢の逸品“トゥルティエール”
リンゴが主役のお菓子と言えば、薄いリンゴをフイタージュ生地やシュクレ生地などに敷き詰めて焼いたリンゴのタルト、ホロホロ食感のビスケットととろとろリンゴを重ねたクランブル、オーブンでとろりとするまで焼いてヴァニラアイスクリームなどを添えるオーブン焼きなどが人気者。そして、フランス南西部の特産菓子“トゥルティエール”もリンゴ菓子として有名だ。
パリでこのお菓子と巡り会う機会はなかなかないが、南西部料理が得意な大人気ビストロ「オ・バスク」では、トゥルティエールが名物デザートになっている。オーナーシェフのベルトラン・ゲルノンさんは、高名な三ツ星シェフのスーシェフ(副料理長)として活躍していた腕利き料理人で、デザートの美味しさにも定評がある。ベルトランさんが作るトゥルティエールは、同じ南西部名物のアルマニャック漬けプルーンも入れる豪華版だ。
トゥルティエールはクルスタードとも呼ばれるお菓子で、パートフィロという、小麦粉とトウモロコシ粉製の、春巻き生地のような極薄の生地を使う。パイ型にパートフィロを、溶かしバターを塗りながら何枚も重ね、バターと砂糖でソテーしてカラメリゼさせたリンゴをたっぷり入れて、さらにパートフィロを重ねてオーブンで焼き上げる。バターの香りたっぷりでカリッと軽くほろほろとこぼれるような生地と、しっとりした甘酸っぱいリンゴのコントラストが魅力の郷土菓子だ。
ベルトランさんが使うリンゴはガラ。味が濃く甘味の中に軽い酸味があって、このお菓子にはぴったりだそう。薄切りにしたリンゴは、バターと砂糖で軽くソテー。パートフィロと溶かしバターを重ねた上にリンゴと、アルマニャック漬けプルーンをちぎりながら加え、漬けておいたアルマニャックもふりかける。さらにパートフィロを重ねてバターを塗り、最後に粉砂糖をたっぷりかけて160〜170℃のオーブンへ。
20分もすると、こんがり焼けたトゥルティエールの完成だ。
「オ・バスク」では、アルマニャック漬けプルーンのアイスクリームを添えて提供する。フォークを入れるとパリパリ音を立てながらパートフィロが崩れ、とろりとしたリンゴとプルーンが顔を出す。シンプルで誰にも愛されるクルスタード。作り方はとても簡単。是非、家でも作ってみよう。
(2014/12/3)