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vol.9 いくつになっても一年生

吹く風が湿ると、植物が青々と輝く梅雨がやってきます。

ついこの前まで「桜の便りが……」などと話題にしていたのに、です。

個人的には、ふうと深呼吸したら一週間、瞬きしたら一週間、というくらいの速さで、この春はあっという間に過ぎていきました。

息子が5年間お世話になった保育園を卒園し、小学校に入学したことが、大きな要因の一つかもしれません。いつもなら胸躍る季節が、初めてづくしの事柄に追われ、親のほうが右往左往しっぱなし。古巣を去って、新しい環境に飛び込んでいくのは子のほうなのに、こちらが受ける刺激も半端なものではありません。

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卒園の際には、一人でいろいろなことができるようになった子どもたちを眺めながら、まだ、歩くこともしゃべることもままならなかった時期を思い出しました。

初めての授業参観では、お父さん、お母さんの顔を見たとたん、みんな大泣きだったのに、いつの間にかおっぱいやオムツを離れ、お着替えができるようになり、字や絵を描いたり、歌ったりできるようになりました。時には、お友だちとけんかしたり、守ったりして人間関係も築けるようになりました。年長になってからは、歯が生え変わる子も出てきました! 心身ともに成長したのだと、時の流れを実感します。

卒園式では抱き合って泣いた担任の先生や、保育士の方々、お給食や看護のスタッフのみなさん、児童家庭支援センターの先生方には、感謝の気持ちしかありません。子だけでなく、親の心も育ててもらったことに、精いっぱいありがとうと伝えたいです。

親子で作ったりんごのコースター
保育園最後の参観日に親子で作ったりんごのコースター。
“きゅうきゅう”言っているのは、本人曰く「アザラシの赤ちゃん」。
下絵のときまではそれらしかったのに、色を塗ったとたんナゾの生物に

春を感じた瞬間
あっという間ながらも、出勤途中に春を感じた瞬間。近所の公園にて

特別な観光地に足を運ばなくてもこれだけ立派な桜を愛でられる
特別な観光地に足を運ばなくても、日常でこれだけ立派な桜を愛でられるのは、全国でも弘前だけなのでは、と思います

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感動の涙が乾く間もなく、翌週から児童センター(学童保育)のお弁当づくりがスタートしました。

入学式を皮切りに、保護者会だ、参観日だ、運動会だと、行事は目白押し。備品の購入や宿題チェックに追われ、毎日大量に配られるお知らせ(プリント)を手にしつつ、半分白目をむきながら夜が更けていく……という日々を過ごしました。冒頭で記したように、「時間」が全力疾走で私に向かってきて、ものすごい速さで過ぎ去っていくのです。

駆け出しのライター時代に、あるテレビ局のディレクターに

「なかなかお休みがなくて、お忙しいでしょう」と言ったら、

「いえ、忙しくありませんよ。忙しいという字は、心を亡(な)くす、と書くでしょう。だから、私は忙しいとは言わないのですよ」

と言われたことがあります。

それから私も「忙しい」と口にしないようにしました。書く文章にも極力使わないようにし、別な言葉で表現するようになりました。

ただ、この1、2カ月を振り返って

「あれ? 最近自分のために使った時間って、トイレくらい?」と気がついたとき、これが忙しいってことか、と納得してしまいました。

そのような折、保護者と一般の有志による「読書ボランティア」を見学に行きました。月1回、始業前に各学年(または組)に担当の読み手が訪れ、本の読み聞かせを行うというものです。

「どう思う?」と迷っている私に

「ぼく、いいとおもう」と、息子が背中を押してくれました。

そんなわけで、私も一歩踏み出してみようと思います。毎日やってくる新しいことに健気に立ち向かっている彼を見習って。

心を亡くしている場合じゃありませんね。何かに追われるだけでなく、自分から近づこうという意識、忘れずに持っていたいものです。

まあ、読み聞かせはずぶの素人なので、デビューはまだまだ先になりそうですが。

新小学生に配られた下敷きとクリアファイル
新小学生に配られた下敷きとクリアファイル。全国で配布されているそうですが、
このおかげで青森県民はりんごの品種が言い当てられるのだと、
朝の情報番組(全国版)で紹介されていました

黄色い帽子がまぶしい新一年生
黄色い帽子がまぶしい新一年生。
コープ共済のランドセルカバーは、目立つし汚れなくて良い!とママたちの間で話題に

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小学一年生といえば、黄色い帽子と大きなランドセルが目を引きます。中学生も高校生も、大学生も社会人も、どの「一年生」にもない初々しい姿が、もう一つの春の風物詩です。

このランドセル選び、昨年はニュースになるほど白熱しましたね。まさに、同じ時期に、ああでもない、こうでもない、と言いながら、夏の商戦の真っただ中にいました。

すでに小学生の子がいる弟夫婦には、

「ランドセルにはさまざまな色、形、飾り、機能があるけど、一番はたくさん物が入ること! 今の小学生は荷物が多いから、とにかく大きいのが本人のためだよ」と、力説されました。

まったくその通りです。実際、1年生でも持ち物が多い。そして、ずっしりと重いです。 10万円以上の高級品が珍しくない時代になってしまいましたが、軽さと大きさを優先した上で、お好きなブランドやデザインを選んだほうが良いと、今夏ご購入を検討中のお父さん、お母さんにお伝えしたいです。

わが家も、親のエゴで遠くの工房まで見に行きましたが、最終的には本人に選んでもらいました。こちらの希望を押しつけるより、「自分で選んだ」という気持ちが、長く物を大切にしてくれるのでは、と夫婦で話し合ったからです。

なるべく傷や汚れをつけずにいてほしい、と思う反面、6年後の卒業時にはどんな味わいを醸し出しているのか、今からとてもわくわくします。

良いことも、そうでないことも、たくさん経験して、たくましく豊かな学校生活を歩んでほしいです。そして、親も共に成長していけますように。

布製のランドセル袋とトートバッグ
ランドセルと一緒に梱包されていたものたち。
布製のランドセル袋とトートバッグのレトロ感、かなり好みです

鞄屋さんから子へのメッセージ
鞄屋さんから子へのメッセージ。 これとは別に、親へのメッセージも同封されていました

息子のランドセルと私が小学生の時に使っていたランドセル
実家にて。左が息子のランドセル、右は私が小学生のときに使っていたもの。こんなに大きさが違う!
ちなみに机も私のです。ありがたいことに、同じくことし一年生になった姪が使いたいと言ってくれたので、命を吹き返しました

2017/6/16

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プロフィール

上原 香織

盛岡市生まれ。土手町「鮨たむら」女将。出版社、広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。結婚、夫の転勤を機に弘前市に転居する。現在は夫婦ですし店を切り盛りしながら、青森のおいしいものを探索中。趣味は観光と登山。一児の母。
「鮨たむら」の店舗情報http://www.seijiro.jp/sushitamura/index.html

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