高密植栽培 ~超コンパクトな樹で収益性、効率化を追求する~
現在、世界的に主流となる栽培方法で日本国内にも広まってきました。高度な剪定技術を必要とせず、わい化栽培以上の早期多収、均質生産、作業効率向上を目標とした栽培方法です。面積10aあたり300本以上の定植本数で樹間1m以内、列間3~3.5mが推奨されています。わい性台木の中でもM9系統台木 ※1 の自根を使用したM9自根フェザー苗 ※2での栽培が主流です。世界水準の栽培方法と言えますが、日本国内では栽培管理作業の標準化を目指し、長野県が栽培研究、普及を推進しています。
近年では高密植栽培の多様化が進み、V字トレリス ※3 での高密植栽培が主流となる国もあります。各地域によって栽培方法には特徴があり、より良い方法を目指して日々研究が進んでいます。
《語句の説明》
※1:M9系統台木 …… M9T337、M9ナガノなど。
※2:M9自根フェザー苗 …… M9系統の台木で中間台ではなく自根。1本棒状の苗木ではなく、数本~10数本のフェザー(新梢の腋芽から発生した小枝)が発生している苗木。
※3:V字トレリス …… (← クリックにて説明図ポップアップ)
- わい化栽培以上の早期多収、成園化、品質の揃った生産が可能。
- 下垂誘引 ※4 主体の整枝管理から高度な剪定技術を必要としない。
- 作業のマニュアル化 ※5 が可能とされ、未経験者でも取り組みやすい。
- 作業効率が大幅に向上し、農薬散布量の削減も可能とされる。
- 着色管理が容易で作業労力、時間も大幅に軽減。
- 一旦生産体制が構築されると持続的な高い収益性を見込める。
《語句の説明》
※4:下垂誘引 …… 発生した枝を下方向に引き下げ固定する。(← クリックにて下垂誘引サンプル写真ポップアップ)
※5:作業のマニュアル化 …… 経験とカンで栽培せずにマニュアルどおり行うことで栽培できるようにする。
- 多くの苗木とトレリス、主幹固定資材、かん水設備 ※6 等、多額の初期経費がかかる。
- M9 自根フェザー苗の安定生産体制ができていない。
- 2018年現在、高密植栽培向けの行政による補助制度が確立されていない。
- 高密植栽培に向けた圃場選択、整備 ※7 が必要。
- 慣行栽培と異なる観点が多く、従来の栽培からの意識改革が必要。
- 経済寿命が明らかでない(推定15年程度のショートサイクル)。
- ネズミによる食害、モンパ病 ※8 、凍害 ※9 対策が必須。
- 自然環境による影響(干ばつ、大雨)を受けやすい。
《語句の説明》
※6:かん水設備 …… 従来、リンゴ栽培ではかん水を行う農家さんは少ない。高密植栽培ではかん水が必須であることから、設備として据えつけることを推奨している。
※7:高密植栽培に向けた圃場選択、整備 …… M9台木は乾燥に強く、水分多過に弱い。そのため排水性を確保する必要がある。しかし、良質な果実生産には一定の水分は必要であり、高密植栽培は根が浅く狭いため、水分不足になりやすい。干ばつに備えて、かん水するため水源確保することがのぞましい。
※8:モンパ病(白モンパ、紫モンパ) …… 真正菌の一種が根に寄生する植物の病気。生育不良や枯死に至る場合もある。
※9:凍害 …… 凍害への耐性がとても低い。原因となる排水不良を確実に防ぎ、耐凍性獲得と予防につとめる。