年中温暖な気候の台湾・憧れの蜜りんご事情

今回の記事では去年の11月頃に遡り、私が見て・調べて・食べた、台湾のりんご事情を皆様にシェアしたいと思います。

年々上昇する気温の関係で、台湾国内でも様々なくだものが病虫害による多大な影響を受けていますが、種類豊富なフルーツ売り場には、くだものを買い求める多くの台湾人の姿が見られ、台湾人のフルーツ好きが伺えます。

11月中旬の売り場風景。台湾国内に1000店舗以上持つ「全聯スーパー」では青森りんごフェア開催中でした。ここ数年、青森りんごはやはり人気みたいです

11月中旬の売り場風景。台湾国内に1000店舗以上持つ「全聯スーパー」では青森りんごフェア開催中でした。
ここ数年、青森りんごはやはり人気みたいです

11月のフルーツ売り場はりんごの陳列が最も目立ち、産地はアメリカ、チリ、ニュージランド、日本、とありますが、依然として日本産りんごはその果実の大きさ、品質の良さで多くの方々に支持されています。中でも、宣伝に力を入れているからか、青森県産りんごが大人気で、次に山形県、長野県などもよく知られているようです。

年々品種も増えていて、富士・王林・トキ・ぐんま名月などが手に入るようになってきました。以前、台湾で販売されているりんご事情を紹介した際、最も人気な日本産りんごのほか、台湾産りんごも少しずつ出回るようになったと紹介しましたが、あれから1年経て、売り場から姿が見られなくなりました。色々と調べてみたところ、現在、台湾国産のりんごはウェブ上で販売されることが多いことに気づいたので、調べてみた上、購入してみました。

温暖な台湾でも作れるりんごとは?

調査した中で最も注目されている産地は、台湾中部(台中市和平区)標高2,240mの高山にある「福寿山農場」で作られたりんごです。一部、同じく高山茶の産地として知られている「南投県大禹嶺」でもりんごが作られています。

「福寿山農場」は1945年ごろ、引退した兵士たちの再雇用の場として作られた農場で、標高2,200mあまりの高山気候から、りんご・梨の生産がよく知られています

「福寿山農場」は1945年ごろ、引退した兵士たちの再雇用の場として作られた農場で、標高2,200mあまりの高山気候から、りんご・梨の生産がよく知られています

品種は「秋香」「津軽」「青龍」「富士」「金冠」「五爪」「蜜りんご(恵)」が主要7品種で、収穫は8月初旬の「秋香」からはじまり、11月末〜12月初旬の「蜜りんご(恵)」で終わるそうです。

出典:「直接跟農夫買」ECサイト

出典:「直接跟農夫買」ECサイト

続いて、私が10年ほど前から知っている「直接跟農夫買」(日本語訳:直接農家さんから買う)は、消費者が農家から新鮮な農産物を直接購入できるE-コマースサービスです。りんごについては、製品の新鮮さや産地直送をアピールし、りんごを栽培する農家やその栽培方法を紹介しており、消費者がりんごの出所や栽培過程を理解できるようにしています。

出典:「知果堂」ECサイト

出典:「知果堂」ECサイト

知果堂は、高品質な農産物を専門に扱うE-コマース事業者で、消費者が農家から直接新鮮な果物、特にりんごを購入できます。すべてのりんごは注文後に農家が収穫して発送するため、最も新鮮な状態で消費者のもとに届けられます。また、消費者がりんごを購入するごとに、地元の農家とその家族を支援し、生計を維持しながら持続可能な農業の発展を促進することにつながるそうです。

最後はりんごのみならず、安心安全をアピールする「無毒農」です。

https://greenbox.tw/Products/ItemNew
最後はりんごのみならず、安心安全をアピールする「無毒農」です。

「無毒農」は、無毒(残留農薬値が基準値以内の環境に優しい、の意味。以下同様)で健康的で環境に配慮した農産物を推進するE-コマース事業者です。このウェブサイトでは有機農産物の提供に特化し、無毒栽培の方法についての情報を提供し、消費者の健康食生活と環境保護意識の向上を目指しています。無毒栽培されたりんごの選び方や、これらのりんごと従来の農薬使用の違いについて紹介します。無毒りんごの健康上の利点を強調し、天然肥料の使用や害虫・病気の防除方法など、無毒栽培技術の詳細も提供します。

品種表記よりも「蜜りんご」表記

「台湾国産りんご」として販売されているりんごの中で、高付加価値商品のほとんどが「蜜りんご」の表記で販売されています。それは主に「恵」という品種なのですが、品種名より「蜜りんご」の表記の方がポピュラーです。なぜなら、フルーツ大国の台湾では、“甘さ”が味の決め手なので、アメリカや韓国のりんごよりも“はるかに甘い”とアピールできる「“蜜”りんご」の表記の方がウケがいいという背景があります。

市販の台湾産「蜜りんご」と言うのは、自然着色、甘味と酸味のバランスが絶妙ということで名が知られていますが、近年、あまりにも「蜜りんご」が人気となり、「蜜りんご」を品種名と勘違いする方が増えたため、販売サイトからも「蜜りんごは品種ではない!」というお客様への啓蒙活動も盛んになりました。
https://greenbox.tw/Products/ItemDetail/25582
https://greenbox.tw/Blog/BlogPostNew/6114/taiwan-7-apple-species

実食レポート

今回実際お取り寄せしてみたのは、「知果堂」の福寿山農場「蜜りんご」で、お値段は台湾ドル850元+送料、一箱約2キロ程度のもの。温暖気候の台湾でもりんごが作られている!と楽しみにして購入した「蜜りんご」。まず、箱を開けてみたら、かわいい絵はがきが添えられており、事業者さんからの温かい気持ちをいただきました。

しかし、実物をよく見てみると、日本の「蜜りんご」は、小ぶりでも真っ赤なイメージなのに対し、お取り寄せしたものは、こちらの注文の時期が遅かったからでしょうか、小さくて青い状態のものがたくさん混ざった状態で届いて少しがっかりしました。

早速一つ手にとって、輪切りしてみました。
こちらはちゃんと蜜ができていて、風味のバランスもよかったです。
ただ、もうひとつ切ってみたら、内部は完全に熟しておらず、味と風味も最初とは下回るものでした。

色々と調べてみた感想として、台湾国内でも近年、アボカドやココア、そしてドラゴンフルーツなど、様々な農産物生産にチャレンジし、国の特産品として品質を向上できるように努めている中、暖地にはふさわしいと言われていないりんごのようなフルーツにチャレンジするのがまた台湾らしいなぁと思いました。また、去年から1年という短期間で、農家さんも含め、販売事業者の「蜜りんご」の認知拡大に対する努力は目を見張るものがあると感じました。

台湾国内のりんご生産は日本の技術と比べると、まだまだ長い道のりがありそうですが、このように国産りんごがあり、輸入りんごもある姿は、りんご好きな消費者にとってはいいニュースですね。今後が楽しみです。


2024/8/5

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