りんご高密植栽培日記
決意
2022.11.4
私が栽培している園地は現在2.4haあります。
そのうち河原の園地が20aと40aの二か所あり、
8月の大雨によって60aのりんごが被害に遭いました。
全てのりんごが腐った。
8年前の水害のあった時は半分近く腐らないで残りましたが
今回は4日もの間水の中に入っていたので、
水が引いて見に行った時にはもう腐り始めていました。
なぜ河原で栽培するのかと聞かれますが、
「そこにりんごの樹があるから」
と、ジョージ・マロリーのように話します。
昔から洪水はありました。
親世代に聞くと毎年水が溢れていたと聞きます。
しかしこんなにりんごの樹がくぐることはなかったそうです。
昔も堤防はありましたが、
今あるのは100年の洪水対策で作ったスーパー堤防です。
このスーパー堤防や上流の堤防が出来たおかげで、
岩木川の増水による住宅への被害は一部ありますが、
かなり減りました。
しかし、それと同時に川幅が狭くなってしまいました。
そのため、水かさが増すことになったのです。
他にも川沿いの雑木林があるため、
水の流れが滞ったりするのもあり、
それで8年前が過去最大の水害になったと思います。
そんな8年前の水害があっても河原で栽培していた理由は、
「津軽ダムが出来たら大丈夫だ」
という噂と期待があったからです。
津軽ダムは、目屋にあった目屋ダムの3.6倍の貯水池量だと言われており、
さすがに津軽ダムが出来たら水害は来ないだろう!
と、河原ではもっぱらの噂でした。
これが河原でまだ栽培していた大きな理由の一つです。
就農してすぐ、母とはいつかは河原は手放そうと計画をしていました。
10年前には、少し遠いですが1.5haを高杉地区で借りることが出来て、
50aは水はけが悪くて返しましたが、
1haはまだ借りていて、
水害が来ない園地は、合わせて1.8haあります。
その1.8haの方を充実させていけば、
河原から離れられると思って計画していた時に
こうしてまた水害…
予想していたので覚悟は出来ていたし、
家族も割と冷静でした。
悲しいのは、せっかく実ってくれたりんごが、
喜んでもらう前に腐ってしまったことです。
今まで掛かった労力とか、収入にならなかったではなく、
誰の口にも入らなかったことが何よりも悲しいです。
今、高密植栽培は11aしかありませんが、
収量がMaxになると、河原に植えてある20aのふじの収量を超えます。
河原のふじの収量をカバーできて、
さらに新しい系統のふじに切り替えられる。
水害にあった同じ境遇の農家さんもいると思います。
運が良いことに、自分はまだ若い。
若いから目一杯チャレンジができる。
少しずつ高密植栽培を増やして、
私は河原の園地を手放していきたいと思います。
PROFILE
会津宏樹のプロフィール
板柳町のりんご農家(アルファーム)。
22歳の時に祖父の跡を継いで70aのりんご畑からスタートし、現在2.4ha。
全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)63代目会長、
農水省の働き方改革委員や西北五地域活性化委員も務める。
4Hクラブの研修で長野県に行った時に、高密植栽培を見て興味を持つ。
現在農業に興味のある県外の大学生のファームステイを受け入れており、
りんごの現場を体験させたり、青森を知ってもらう活動をしている。