りんご高密植栽培日記
改良
2022.7.29
高密植栽培に割と大事なもの。
それは潅水です。
植える時はスピードスプレヤーでも水を掛けながら出来ますが、
昨年の6月のように雨が足りない時にはどうしても水が必要で、
それもスプレヤーで水を掛けるとなると
時間が何時間あっても足りません。
これをどう楽をして潅水するかを考えています。
通常の丸葉栽培とは大きく違う点で、
水を切らしてしまうと今後の生育にも大きく関わってきます。
潅水設備も種類がたくさんあって、
電気で制御してタイマー式にして水をあげたりだとか、
調べてみると点滴チューブなどもピンキリであります。
もちろんお金を掛ければすごく良いものが出来ますが、
最初はお金をなるべく節約したいですよね。
うちではイスラエルの会社のNETAFIMというところの
ストリームラインX60点滴チューブを使っています。
20センチ毎に点滴のように水がポタポタ出てくるタイプのもので、
結構薄いペラペラなものですが、
とにかく安いのです。
少ない面積からスタートする方にはもってこいだと思います。
もしも購入する時はジョイント部分やストッパー部分も
忘れずに併せて購入しましょう。
点滴チューブは解決したとして、
どうやって水を流すのかを考えることでしょう。
うちの高密植の園地に井戸はありますが、
出が悪いので近くの薬剤散布の時に使っている
井戸からタンクに汲んで、
軽トラで園地まで運び、
高低差を利用して別なタンクに移し替えています。
そのタンクから塩ビパイプを通って、
各列の点滴チューブへ流れていきます。
大体夕方に汲んでタンクに移し替えて、
夜にちょっとずつ潅水されるというような状態です。
タンクが2つあれば事足りますね!
昨年までは塩ビパイプを露出した状態で使っていたので、
草刈りや薬剤散布の度に外したり、
大変面倒でしたが、
今年は塩ビパイプを土中に埋めているので、
より手間が掛からず潅水できるようにしています。
塩ビパイプは繋ぎ部分も含めても1万円も掛かりませんでした。
塩ビパイプで果たして大丈夫なのか?
という疑問は残りますが、
追々わかると思います…
失敗したら改善するだけじゃ!!
しかし、もう二度とパイプを埋めるあの穴は掘りたくない(笑)
ゴロゴロ石が出るし(笑)
知り合いが就農して取材された時に
「楽して稼ぎたいです!」というのを話したところ、
そのまま広報に載っちゃって、
先輩農家から「楽して稼ぎたいとは何事か」というお叱りを受けた、
というお話を聞いたことがあります。
元々違う分野で会社の代表をされていた方でしたが、
実家の畑の跡継ぎがいないということで、
事業を兄弟に譲渡して就農された方でした。
今ではその知り合いは規模も10倍以上になり、
誰よりもチャレンジをして苦労もしている農家になっています。
傍から見ても楽しているようには全く見えません(笑)
「楽をして」というのは、
単に努力をしないという訳ではなく、
農業にとってあるあるのような負担になっている作業を機械化したり、
簡略化していくことによって、
「結果として楽になった」というのを目指すという意味だったのです。
日本では苦労をしている方が美しく、
楽をしていると怠惰というようなイメージがどうしてもついて回ります。
もしかしたらこの高密植栽培も
「楽して稼ぎたい」りんご農家の代名詞になるんじゃないかな??
そもそも楽して稼いで何が悪いのか、
全く理解できない。
というか楽して稼ぎたいと思ったら、
りんごはやってないよね(笑)
りんごは果樹で一番難しいと思っています。
さらにこの青森県でのりんご作りというのは、
青森ブランドはあるものの、
栽培に関しては本当に難しいものです。
よく先人たちはやってきたものだと心底思います。
歴史を辿れば辿るほど。
この高密植栽培も、
そんな技術の積み重ねから成り立っているんですよね。
まだまだ勉強不足で手がまわってないりんご農家ですが、
これを機にちょっとでも良い方向に向かえたら良いなと思います。
PROFILE
会津宏樹のプロフィール
板柳町のりんご農家(アルファーム)。
22歳の時に祖父の跡を継いで70aのりんご畑からスタートし、現在2.4ha。
全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)63代目会長、
農水省の働き方改革委員や西北五地域活性化委員も務める。
4Hクラブの研修で長野県に行った時に、高密植栽培を見て興味を持つ。
現在農業に興味のある県外の大学生のファームステイを受け入れており、
りんごの現場を体験させたり、青森を知ってもらう活動をしている。