第92号　スウェーデンに咲く八重桜

4月30日の天皇退位、そして翌5月1日の新天皇即位と、国王制のスウェーデンでも大きいニュースとして報道されました。中世と言うより古代を思わせる皇居での退位の様子がテレビで紹介され、今更ながら当国の人々に異国の感じを与えたのではないかと思われます。そんな4月の下旬、首都ストックホルム中心部にある、王立公園（Kungsträgården）の桜がほぼ満開とのことで、見に行ってきました。確か4、5年前にストックホルムに住んでいる長女から王立公園の桜の写真が送られて来たのですが、今回は肉眼で見てきました。

首都の王立公園は近代南部を除き周りが大きい建物で囲まれていて現在では小さめの公園と言う感じを与えます。王立公園の歴史は古く、スウェーデンの初代王、グスタフ１世が1530年頃に庭園として使ったとも伝えられています。ちなみに、王宮は公園の南部の橋を渡った向側の島にあります。島には王宮と共に国会議事堂、ノーベル博物館などがありガムラスタン（古い街）と呼ばれています。王立公園は街の中心部にあるだけに、ストックホルムの人々の憩いの場ともなっています。噴水、銅像、コンサートのステージ等があり、そして人口の池では冬には無料のアイススケート場となり、家族連れで大変賑わいます。

王立公園の桜は1998年日本よりスウェーデン国王に贈られた63本の八重桜で、近年（6、7年）には見事な桜が4月の終わりから5月にかけ咲き、首都の人々にとても親しまれています。桜の規模は異なりますが、 満開の時期が弘前公園とほぼ同じ頃なので、ストックホルムと弘前には季節的な共通点があるかもしれませんね。筆者が訪れた4月下旬は週末、公園は多くの人々でとても賑わっていました。記念写真を撮ったり、座って憩い、子供達は走り回ったりで皆休日を楽しんでいました。

桜が植えられている公園の北側は、ストックホルムの銀座通りといえる、ハムンガータンの通りがあり、その角に昨年開店した、北欧第1号店のユニクロがあります。ユニクロの真向かいはスウェーデンの名門デパートNK（Nordiska Kompaniet）があり、規模は異なるもののちょっとにらめっこをしている（？）感じです。ユニクロを訪れてみたら、若者だけでなく、多くの世代の客で混み合っていました。服装品は日本のものと似ていましたが、サイズは日本とは異なり、日本ではMのものが、スウェーデンではSになっている様でした。　値段は当国の他の洋服店より少し安めの感じで、製品と値段によるユニクロの世界制覇への意気込みが感じられました。

話を変えますが、近年（4、5年）首都ストックホルムの都心の交通網がとても改新されました。ユニクロのあるハムンガータンにはここ1、2年前より路面電車が走り、また王立公園から300メートル程離れた所に、地下鉄の中央駅があるのですが、その地下鉄中央駅のさらに下に、ストックホルム郊外からのローカル電車が2年程前に開通されました。地上は都心繁華街で、あまり気が付かないのですが、その地下は現在地下鉄の中央駅、そしてその下にローカル電車が乗り入れていて、さらに説明すると、ストックホルム中央駅とは300メートル程の距離で、地下歩道でつながれています。新しい路面電車が都心の風景を既に少し変えていますが、地下に降りると巨大な駅で、筆者の様に田舎（？）から来るとその発展に今更ながら、驚かされるのでした。

その田舎に話を少し戻せば、この4月中旬から下旬にかけ、日中気温20度の日々が2、3週間続き、その上殆ど雨が降らず、当市と共に南スウェーデンを中心に、10ヶ所程で山火事となりました。昨年夏の山火事の記憶がまだ大きいだけに、人々はちょっと不安にも襲われましたが、幸い5月初め当地では雪が5センチ程積もり、大地が真っ白になり、火災警報も解除されました。

2019年5月17日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰