第89号 ユングビー民話博物館が無形文化遺産に!
昨年の11月29日の新聞に、隣町ユングビー(Ljungby)の民話博物館が、ユネスコの世界遺産(無形文化遺産)に指定されたと報道されました。日本ではご存知の様に、既に1993年に青森県と秋田県の白神山地がユネスコの世界遺産として登録されました。世界中に登録されているユネスコ世界遺産は一般的に歴史的な町、遺跡、建物、自然等が主ですが、ユングビーの民話博物館は抽象的で、「無形の世界遺産」と指定され、世界中で20番目の指定と記されていました。スウェーデンでは無形世界遺産は初めての事です。指定された理由として、ユングビー民話博物館は無形文化を良く保存し、また後世へ伝える事に努力している、その成果を讃えたいとも記されていました。
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話を少し外らしますが、スウェーデンにはユネスコ世界遺産が15箇所あります。有名なのは、1991年にスウェーデン最初の世界遺産と指定された首都ストックホルム郊外にある、女王の島、お城(Drottningholms slottsområde)です。 そして北スウェーデン、ラップランド地方には先住民族のラップ人(自称サーミ人)が現在約2万人から4万人住んでいるのですが、その衣装と共にトナカイの遊牧が有名で、サーミ人が住んでいるラップランド地方、そして彼らの民族文化をユネスコの世界遺産、ラポニア(Laponia)として1996年指定されました。更に中部スウェーデンのファールン(Falun)の町とそこの巨大な銅鉱山が2001年に指定されています。
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話を戻しますが、昨年の12月上旬にユングビーの民話博物館を訪れてみました。こぢんまりとした古い建物で、標識が無ければちょっと見逃すくらいで、古い2階建の建物でした。当日入り口前の広場では、天気も良く少し暖かかったからか、ランチ時間で学童達が楽しく昼食を野外で食べ、また元気に走り回っていました。入り口で迎え入れてくれた女性、アンナさんから「取材だったらタダですよ」と言われたけど、入場料60クローナ(約750円)を払い中に入りました。
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入り口受付の部屋には、沢山の民話集が並べられ、1~2人の作家の名前には聞き覚えがありました。スウェーデンの民話が書かれ出したのは1800年代の中旬頃からとの事で、それ以前は特に地方ではほとんどが口伝えで民話が伝えられていたとの説明でした。当地マルカリドも含め、ユングビーから北上100−150キロ前後はスモーランド地方と言われ、森林に囲まれ、暗い印象が強いのですが、反面、その森林に囲まれた神秘的な自然が沢山の民話を生み出したのではと思われます。
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ユングビーで最初に書かれた民話は1834年との事で、作家はドイツのグリム兄弟、童話の影響を受けているとの事でした。
2019年1月10日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰