第88号 「諸聖人の日」の墓参り
8月13日頃、日本ではお盆、祖先の霊を祀ります。スウェーデンでお盆に匹敵する行事は、カトリック教会の祝日から来た「諸聖人の日」(Alla helgons dag)です。スウェーデンでは、11月最初の土曜日が「諸聖人の日」で、祖先の霊を祀りに墓地を訪れます。今年は11月3日の土曜日でした。
家内の故郷は両親が住んでいたスウェーデン第3の都市、マルメ市です。当地マルカリドから国道4号線を約120キロ程南下した、デンマーク、コペンハーゲンの対岸の都会です。家内が若年の時亡くなった義父の後、義母が亡くなったのは既に25年程前の事、その義父母の墓がマルメにあります。墓石には義父母と共に既に他界された義兄2人の名前も刻まれています。年に1、2度、マルメを訪れた次いでに墓参りに行くのですが、「諸聖人の日」の訪問は3年に1度位でしょうか…。
先日の11月3日、土曜日はとても天気が良い秋晴れ、ちょうど予定も入っていなかったので、家内と2人でマルメへと車を走らせ、墓参りに行って来ました。義父母が眠っている共同墓地は市の南側の町、リムハムの町にあります。広々としていて海岸にも近く、落ち着いた感じの墓地で、係りの人にどれくらい墓があるのだろうと聞いてみたら、2、3万ではきかないのではと言われました。
スウェーデンでは「諸聖人の日」に、祖先のお墓にキャンドルを灯す習慣があります。ローソクを灯篭に入れ、風が吹いても消えない様にして灯します。所々には花も飾られていました。当日は天気も良かったので、沢山の人々が訪れ、車も渋滞する程でした。
墓地は、スウェーデンでは税金(住民税)の墓地税によってまかなわれているので、住民には墓地が保証されています。墓石については個人で用意する事になりますが。墓地の広さは普通縦2.4メートル、横1メートルで、広さは土葬に合わせていますが、近年、特に都会では火葬が殆どです。墓地の管理、敷地については埋葬後25年までは保証されていますが、その後は墓地の整理、管理の為年間約6千円程払う事になります。もっとも、遺族が近くに住んでいて管理、清掃出来る墓地については経費を払う必要がありませんが、もし2、3年墓地を放っておくと、遺族がいないと解釈され墓地は没収される恐れがあります。
少し話をそらしますが、家内の祖父は田舎の神父だったので、今でも田舎へ行くと大きい墓石が残っています。多分墓地の管理は義祖父が神父だったので教会の方でしているのだろうと思われます。義祖父の墓石にはデンマーク人だった義祖母の名前が刻まれていたのを覚えています。残念ながら、義祖父は義母がまだ6歳の頃に亡くなられ、 家内は義祖父には会ってはいません。反面義祖母は96歳まで長生きし、家内が子供の頃亡くなられ、その当時は義父母の家に一緒に住んでいたとの事でした。もっとも、義祖母は義祖父の亡くなった後、長年義母も含め娘達3人を1人で育てたのですから、大変だったのではと思われます。当時は社会保障が殆どなく、教会の方から生活の為に遺族金が払われていたのでしょう。
今回マルメの墓地を訪れ、発見したのは共同墓場でした。そちらの方では沢山の訪問者と共に、多くの花束とキャンドルが灯され、とても綺麗な感じでした。共同墓場では墓石の代わりにレンガ作りの様なガラスの塔、塀が建てられていて、その一つ一つに亡くなられた人々の名前が刻まれていました。まだ新築だったからか、多くは空白でした。
我々が訪れた11月3日は「諸聖人の日」だったからか、当日墓地には墓地管理事務所の案内所テントが張られていて、コーヒー、紅茶とお菓子が無料でサービスされていました。3人いた係りの1人、ハンスさんに「ボランテアですか…」と声を掛けてみたら、「国家公務員ですよ…」との返事、墓地はマルメ市営でなく国営なのか、と今更ながら思い返しました。
2018年11月27日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰