第71号 クリスマスコンサートとディナーブッフェ
ロシアの小説家トルストイは「戦争と平和」、「アンナ・カレーニナ」そして「復活」等と長編小説で有名な文豪で、既に亡くなったのは1910年なので100年以上も前の事です。筆者がまだ弘前の高等学校へ通っていた頃、悪友たちと騒ぎつつも、ドイツやフランスの小説と共にトルストイの長編小説を読んだのを思い出します。もっとも近年ではそんな長編小説はもう読めないのではと思うのですが。
そんな11月の中旬頃、西海岸に住んでいる友人からメールが入り、当地マルカリドの隣町ヘッセルホルム(Hässelholm)へ日本人も1人入っている楽団がクリスマス演奏会をやるから観賞してはとの連絡でした。ホームページで演奏会の案内書を見たら、楽団はボーフース・ビッグ・バンド(Båhus Big Band)、そして歌手の名前がヴィクトリア・トルストイ(Viktoria Tolstoy)と記されていました。「トルストイ…」もしかしたらと思いつつ、更にホームページで調べて見たら、祖父の祖父がロシアの作家レフ・トルストイと書かれていました。ヴィクトリアさんはスウェーデンでは有名なジャズシンガーとの事で、首都ストックホルム近郊で生まれ、現在42歳、お子さんもおられ数年前から南スウェーデンに住んでいるとの事でした。
早速家内と相談し12月1日の演奏会を聴きに行く事に決めました。演奏会の場所はヘッセルホルム町の文化会館の中にあるコンサートホール、2階建てで、空席を探したら1階はすでに満席近く、最前列だけが空いていたのですぐ予約しました。
会場でのパンフレットの説明欄(文)にはヴィクトリアさん及び楽団は今回のコンサートを南スウェーデンを中心に各地で1週間行うと書かれ、前日の11月30日にはスウェーデン第3都市のマルメでコンサートを行っていました。コンサートホールは満員近く250人位の観客で賑わっていました。若者は少なくほとんどが中年の人々でした。
我々が座った最前列はステージに手が届く程の距離で、歌手・演奏者達がほんの5,6メートル手前で演奏して、肉薄感がありました。ヴィクトリアさんの声を聞きながら、またその顔や体格を見ながら、トルストイが何処かにいるのでは…とも思ったのですが、観客のほとんどは彼女の歌、そして楽団ボーフース・ビッグ・バンドの迫力のある演奏に盛んに拍手を送っていました。演奏会では時々観客と共に歌ったりで、筆者は音痴以上にジャズなどあまり知らないので口をモグモグごまかして観賞していました。それでもやっぱり演奏、歌には迫力があったからか、帰り道では作家トルストイの事はすっかり忘れ、その代わり耳元で激しい演奏と共に彼女の歌声が繰り返されている感じでした。
家具店のイケアでは今年も恒例の様にクリスマステーブル(julbord:ユールボード)、クリスマスブッフェが11月19日から12月23日までの予定で、全国のイケア店で開催されました。値段はイケアファミリー(イケア会員)は129クローナ(1550円)、一般は229クローナ(2750円)、13歳未満は19クローナ(230円)です。筆者は12月3日、金曜日に隣町イケアエルムフルト店へ行って来ました。クリスマステーブルの会場は、午後2時からイケアレストランの片隅を区切ってのブッフェ式になっていました。食事は3つのテーブルから成り立ち、最初のテーブルは冷たい魚料理(各種ニシン漬け、鮭、ゆで卵、パン、パイ、サラダ、ハム)、第二のテーブルは暖かい肉料理(ミートボール、各種ソーセージ、キャベツの煮込み、茹でジャガイモ)、そして最後のテーブルはデザート(甘いお粥、ケーキ、お菓子、果物)です。
今年の名物はりんごの町で有名なシビックのりんごが入ったニシン漬け及びカレーニシン漬けと書かれていました。更にミートボールでは肉と共に肉無しの野菜のボールもありました。
当日はわりと空いていて、若い店員が親切に対応していました。スウェーデンの習慣を重んじるイケアでは、建物はスウェーデン国旗に合わせ、青と黄色にしています。食事でもクリスマステーブルを習慣を大切に守っています。最近の新聞ではイケア創業者のイングヴァル・カンプラード氏が今年は90歳となり、恒例のイケア創業店であるエルムフルト店での職員へのクリスマスの挨拶が危ぶまれていると書かれていました。
2016年12月13日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰