第61号 森の中でキノコ刈り
11月、例年では雪も幾度か降り、すっかり冷え込む時期ですが、今年の北欧は11月に入っても10度以上の天気が続き、冬が来ないのではとも思いました。そんな11月中旬、近くの森へキノコ刈りに行って来ました。例年では9月から10月の初め、大鹿の狩りが始まる前に2、3度散歩も兼ね、休日等雨が降っていなければ近くの森林へキノコ刈りに行くのですが、今年は暖秋と共に10月一杯はオーストラリアに旅行に行っていたので遅れ、11月に入ってから行ってみました。
森の中は既に所々落ち葉に覆われ、夏の終わり頃に見られる大型のキノコ、カールヨハン(Karljohan,ヤマドリダケ)は無く、キノコもまばらでやっぱり自然の世界では秋も終わりつつあるのかなと思いました。反面苔のいっぱい生えた森の中はシーンとしていてとても神秘な感じで、その辺から伝説の精霊が現れるのではないかとも思いました。
マルカリドでは所々の森林の中に山小屋や雨よけの小屋が設けられていています。夏には人々がバーベキューを楽しんだり、又秋の猟りの時期には猟師達が早朝山小屋に集まりその日の狩りの計画を立てている様です。キノコ刈りに行った当日は全く人もいず、私1人の完全な静けさだけでした。
20~30分程で見つけた食用キノコは、スウェーデンでは最も人気のある、黄金の様な黄色いカンタレラ(Kantarell,アンズダケ)とカンタレラと同種の茶色で楽器のトランペットの名前がついているトランペットスバンプ(Trumpetsvamp)でした。(注:スバンプはスウェーデン語でキノコです)美味しいカンタレラは黄色い色が印象的で、誰にでも直ぐ見分けられ、又他のキノコと見間違う事も無いだけに、発見されると殆ど直ぐ採られてしまいます。一方のトランペットスバンプは、松や杉林等に多くはえ、味や色もカンタレラ程では無く、スーパー等でもシーズン中は値段が少し安く売られています。反面一度見つければ、付近一帯に散らばっていて、キノコ刈りでは割と量も多く取れるのが普通です。今回のキノコ刈りでも、かごに集まった量では圧倒的にトランペットスバンプが殆どでした。採って来たキノコは早速夕食に、野菜の代わりにとフライパンで炒め、パスタと共に食べました。採りたてのキノコは、土や根を洗うのが億劫ですが、新鮮な味と共に、森の匂いも感じられそうでとても美味しく食べました。
スウェーデンのキノコの話しで有名なのは、かのバイキングが遠くフランス、イギリス更にアメリカへと遠征し暴れていた中世期時代、毒キノコのフルーグスバンプ(Flugsvamp, ベニテングダケ)を食べながら航海していたと言う話です。長時の船旅では、毒キノコの様な、麻痺作用のある食べ物を口入れながらでないと精神的にも又体力が続かず、更に彼らの凶猛性の原因として伝えられました。いかにもバンキングが恐れられた時代の背景に合い、現代の割りと冷静な北欧人と凶猛なバイキングの由来にもぴったり合う伝説です。最も近年では、歴史的証明、事実はなく、1700年代の歴史家サムエル,オーデマン氏が書いた作り話しが原因だったとも言われています。
最も毒キノコのフルーグスバンプは、白、赤、橙色と色々ありますが、特に白い色ではマッシュルームととても似ていて、ぶつぶつの印が着いているかいないかの違いでだけです。マッシュルームは現在では殆どは栽培したキノコが普通で、食品店で売っているのですが、つい見間違いマッシュルームと思い森の中で採って後で食べると大変です。毎年数人或は数十人が中毒になっている様です。数年前だったか外国人が中毒にかかり亡くなったニュースがありました。ふっとスウェーデンに来て始てキノコ刈りに行った頃はキノコの本を片手に,採っていたのが思い出されました。
2015年12月2日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰