第59号 夏の思い出とりんご狩り
今年の夏から秋にかけ、日本では例年に無く豪雨、自然災害に遭ったと聞きます。当国のニュースでも福島の氾濫の様子がテレビで放映され、今更ながら大変だと思いました。気象の異変は北欧・スウェーデンでも同じで、この夏は普段水害に遭わない地域でも集中豪雨に遭ったりで、町全体が水浸しになったりもしました。
そんな夏の終わり、9月12日に西海岸の避暑地ボースタッド(Bastad)へ、恒例のりんご狩りに行きました。たくさんの人々が手にかごや袋を持って、りんご畑は大変賑わっていました。新聞の広告には、今年は雹害に遭い、値段は半額…とも書いていたので、ちょっと心配もしました。早速、味覚の素晴らしいグリヴェシュタイナー(Gravensteiner)のところへ行ってみると、初日とあってまだりんごは残っていましたが、良く見てみたら、無残にもりんごのところどころに傷のように印がついていて、ちょっと悲しくもなりました。葉っぱに覆われ、傷の無いりんごを選びながらもぎ取りました。もぎたてのシャキシャキしたりんごはとても美味しく、筆者だけでなく、あちらこちらで夫婦や子ども連れの人々が食べながら、もぎ取りを楽しんでいる様子が見られました。
今年の夏の様子を書いてみましょう。多くの人々が夏休みを取る7月中は、天気が崩れがちで、雨が降り、冷え込みがちな天気でしたが、8月に入ってからは快晴の日々が続き、暖かくなりました。8月の中旬、南スウェーデン第3の都市・マルメから、さらに少し南下したリムハム町へ海水浴に行ってきました。海岸からデンマークへと続くオレサンド大橋が手前に見え、青々とした海の色が美しく、海水浴というよりは、のんびりと風景を楽しみながら甲羅干し、いわゆる日向ぼっこという感じです。多くの人々が海や芝生の上で日光浴を楽しんでいました。写真で見るととても暖かそうですが、実際には海水温は20度も無く、冷たいので、思いっきり日光浴をした後でないと海水に飛び込めません。それでも、ましてや猛暑の少ない北欧、せっかく海水浴に来たのに、年間に数度しかない泳ぐ機会を逃すと翌年まで待たなければいけませんから、泳いできました。
8月14日から21日まで、マルメ市では恒例のマルメフェスティバルが行われました。市街中心地のストール広場(Storetorget,大きい広場)に大きなステージが設けられ、多くのアーティスト達のコンサートが、午後から夜にかけて行われました。マルメフェスティバルの特徴は、中心街・広場全体を開放して行われ、コンサートなどのほとんどの催し物が無料なのです。その上、参加するアーティストの方々は有名な人が多く、音楽ファンにとっては最高のイベントでしょう。最終日の21日に公演したアーティストはセイナボ・セイ(Seinabo Sey)、マスコミでも少し話題になっている若干24歳の女性歌手で、未来を思わせる独特な歌声が印象に残りました。ステージのライトと共に、凄い音響、会話もできずにただ彼女の歌声に聞き入っていました。
8月下旬の週末、当地マルカリドから東へ25km程離れた、人口約1万人の隣町・オスビー(Osby)へ行ってきました。町の広場で市場が開かれると聞いたので行ってみたのですが、残念ながらちっぽけな広場を開放し、屋台が10台程度で、子どもたちのための遊園地、遊び場となっていました。警察のパトカーが1台展示され、子どもたちは記念写真を撮ったり、ポニー(小馬)の乗馬が行われ、子ども連れの家族にとってはとても楽しいひとときと思いました。
オスビーの町には、木製の列車等の玩具製造会社工場、社名ブリオ(Brio)があり有名です。1980年代に製造工場が後進国に移動され、現在オスビーでは製造されていないとも聞きます。小さい町々にも、気象に限らず、少しずつ世界経済に影響されているのでしょう。
2015年9月29日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰