第55号 シビックのりんごジュース工場
5月中旬の連休に、りんご祭り(Applemarkanaden)で有名な東海岸の町シビック(Kivik)へドライブして来ました。当地マルカリドから約120キロほどで、毎年9月下旬のりんご祭りには行くのですが、これまで春に訪れた事が無かったので、ちょっとしたピクニック気分で、コーヒーとお菓子をかごに入れ車を走らせました。当日は天気も良く、東海岸線を南下し杉林と砂の海岸線を眺めながらの気持ちよいドライブでした。
途中の砂浜で1時間程休憩し、コーヒーを飲みながら波の静かな海を見入りました。夏場には海水浴客で混むと思われる海岸は、がらんとしていました。そんな砂浜を、中年のカップルが杖を片手に楽しそうに歩いていました。丁度携帯電話で大声で話していた私に気が付いたのか、我々の方を見上げながら杖を振り上げ、「ヘイ(こんにちは)!」と声をかけてくれました。さらに海岸の向こうには犬を連れた夫婦が見える位で、まるで我々が海岸を所有している様な感じでした。ずっと遠くの方に岬が見え、手前は入り江になっていて、その辺りがシビックだろうかと思いつつ美しい景色を楽しみました。
休憩した場所から20km位でシビック到着なのですが、海岸の道路は砂利道が多く、その上行き止まりが多く、更に自然保護区域になっていて、車で30分ほど走ってようやくなじみのシビックの町に入りました。まずはシビック果樹工場(Kivik Musteri)へ。街から2kmほど離れたりんごジュース・果樹ジュース工場です。当日は連休の為か、沢山の車が駐車場に停められていました。またデンマーク車が目立つのも、南スウェーデンやデンマークに近いからでしょう。
シビック果樹工場では、りんご実入りのジュースを2ケース(20本)と、グラナタアップルと言われる、赤い果物ジュースを1ケース(10本)、更にトマトジュース等を購入しました。甘酸っぱくて濃い実入りのりんごジュースは子どもたちが好きで、20年ほど前弘前でおじいちゃんとおばあちゃんにご馳走になって飲んだりんごジュースを思い出すのか、「日本のりんごジュース」と呼んで喜ぶので、我が家では欠かさないようにしています。
シビックの町そのものは人口が1,000人で、町というより村のような感じですが、秋のりんご祭りや夏の闇市は全国的にも有名です。この周辺の南の海岸の村々には首都ストックホルムの住民が別荘を持っていたりするので、土地の人々は彼らを「08人(ストックホルムの局番号が08だから)と呼んだりしています。
シビック果樹工場はシビック果樹株式会社の一つで、コンツェルン全体では果樹工場を中心に従業員が140人います。創業者のヘンリック・オーケソン(Henric Akesson)が最初にりんごの樹を現在の果樹工場地に植えたのが始まりで、1888年の事でした。現在も会社はオーケソン家族の所有でスパークリングワインも製造しており、国営の酒屋システムボラゲット(Systembolaget)で、このスパークリングワインは「オーケソン」の名前で売られています。
シビックの海岸で遅い昼食を食べました。私はニシンの唐揚げにジャガイモポンフリット、家内はニシンハンバーグでした。未だ5月の中旬、曇り空で風は冷たく、温かいニシンをブルブル震えながら食べました。周りの人々も防寒着や毛布を羽織ったりで、それでも、長かった冬からやっと解放されたと人々は春の空気を一杯に吸い、ニシンやシャケを食べ、時々見える太陽に微笑んでいました。家族連れの子供達がはしゃいでいるのに、ダックスフントの子犬がブルブル震えているのが印象的でした。
帰り道にはりんごの花々の咲き始めが見られ、果樹工場の駐車場で見た桜の花をフッと思い出し、普通ならば桜の後にりんごが咲くけれどシビックでは桜とりんごが同時に咲くのだろうかなどと考えたりしました。
2015年5月28日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰