第52号 スウェーデンのお酒事情
スウェーデンで、アルコール度数3.5%以上のお酒を買う時は、「システムボラゲット(Systembolaget)」という国営の酒類専売店でしか購入できないようになっています。スーパーなどにも販売されていますが、アルコール度数3.5%未満のものしか置いていません。隣国のフィンランドとノルウェーも同じく、酒類の飲料は政府による独占販売です。その他の南寄りのデンマークやヨーロッパ大陸諸国の殆どは、国営の専売制ではなく、食料品店やスーパーなどの店舗でお酒を購入できます。
スウェーデンの場合、酒・アルコールについては歴史的背景に禁酒運動、またアルコールの乱用が社会問題にもなり、サラリーマンの世界のように酒が入ったので無礼講と言うわけにはいきません。むしろ下手にその辺の街中や公園などで酔っぱらったり、叫んだり、又眠ってしまうと、警察が来て半日拘束される事すらあります。
その反面、真夏祭では、人々は海岸や別荘で夜明け迄、飲み明かすのですから、全く厳しく取り締まられているとは言えません。また、高等学校の卒業式の後、卒業生達は街でのパレードで盛り上がります。アルコールの影響もあって、未成年者達が叫び声を上げ祝うのですが、警察が取り締まったと聞いた事はありません。
システムボラゲットでの酒の販売は、日曜日は禁止され、土曜日は地方では13時、都会では15時に閉店します。西暦2000年までは土曜日も閉まっていました。未成年者への酒の販売も禁止されていて、最低年齢が21歳から20歳へと下げられたのは1969年になってからの事でした。当然の事ながら若者達は酒屋で、又レストランでもアルコール飲料の注文では、時々身分証明書を強いられます。
ちょっと余談ですが、我々日本人は若く見られるのは嬉しいのですが、筆者が32歳の頃、夕方のパーティーの為にと酒屋にワインを買いに行った時の事。身分証明書を請求され、その時に限って忘れてしまい、酒も買えず、パーティーに行き、説明を聞いた悪友達(?)は大笑いでした。
同じような出来事が長女の所でもありました。長女が25歳の頃、ストックホルムに住んでいて、家内と共に彼女のアパートの近くのレストランでの夕食の時、皆でワインを頼んだのですが、長女にはウエイトレスから身分証明書の提出があり、親が幾ら保証してもダメで、結局、長女はアパートへ戻り身分証明書を持って来ました。
人口1千万足らずのスウェーデンには全国に420件のシステムボラゲットがあります。国の直営販売とは言え、開店の許可は市が決定し、またレストランやバーなどでのアルコール飲料、3.5%以上を販売するには市の許可が必要です。反面、酒類は国の管理下にあるだけに、ワインやウイスキーなど、値段の割りには良い物が揃い、相当厳選しているのか、酷いワインに当たった事はありません。近年、日本のサントリーやニッカのウイスキー、またアサヒやキリンのビールがシステムボラゲットで売られているのですから、筆者もニコニコです。日本のお酒も評判が良いのでしょう。
そんなシステムボラゲットですが、ここ10年程でしょうか、アルコール入りのサイダー(Cider)が目立つようになりました。果物の味と甘みが入った炭酸アルコール飲料水、アルコール分は4~7%でビールとほぼ同じで、飲みやすいのか若い女性に人気があるのでしょう。日本では暖めて飲むアップルサイダー(*サイダーは「りんごの果汁」のことを指しています)があるとも聞きますが、当地では、りんご以外にも苺のサイダーなど主に果物を使ったお酒がいろいろあります。
先日、娘が家に来ると言うので、アップルサイダーをシステムボラゲットで数本購入したのですが、ワインを飲み、娘達が帰った後、初めて甘酸っぱいアップルサイダーを飲んでみました。口当たりはずーっと昔の青春時代に飲んだような…そう、コークハイ、それもコカ・コーラでかなり薄めたような感じでした。既に社会人として独立しつつある娘達にしてみれば、やっぱりワイン等が合うのでしょう。
2015年2月19日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰