第49号 スウェーデンのリンゴ事情2014
例年、11月の下旬ともなると雪便りで賑わうのですが、今年の晩秋は暖かく、霜も未だ1、2度しか降っていない、南スウェーデンの近況です。毎日のように“鹿”が芝生に覆われた庭に現れ、小枝や野菜の残りを食べ、又庭に残っているりんごの木までも大鹿に幾度か襲われ、見るも無残な姿へと変わり果てなんとも哀れな状態。自然の世界とは言え、怒るわけにもいきません。
そんな晩秋の午後、当地から40キロほど離れた隣りの町、ヘッセルホルム(Hasselholm)へドライブに行ってきました。
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スウェーデンの場合、食品スーパーチェーンでは、“イーカ(ICA)”と“コープ(COOP)”が中心です。今回行ってきたのは、イーカ「マキシ(MAXI)」とコープ「エキストラ(EXTRA)」です。イーカの歴史は古く、今から100年ほど前に中部スウェーデンでハーカン・スウェンソン(Hakan Swenson)が開業した店が始まり、創立者の意志は地方の小さい食品店が共同で買い入れをする事によりコストを下げ、更に食品店の存続を支えたと言われています。一方のコープは日本でも知られているように生協が基本です。大きさでは現在イーカの方が大きく、又利益も伸びています。
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食欲の秋でもありませんが、食材が豊富に取り揃えてありました。秋は野菜や果物の収穫期ですし、狩りが秋から冬に行なわれるのは動物が冬に備えよく食べて肥えているからでしょう。肉類の品揃えも豊富です。最も冬に狩りをするのは、雪があるので動物の足跡が見つけ易く、さらに肉が腐らないからと当地の知人から聞いた事があります。
最初に訪れたマキシの食品売り場では、秋の新鮮な旬の野菜や果物が豊富に並び、見ているだけで食欲が湧いてきました。国内産(スウェーデン産)のりんごも豊富に並べられていました。値段は1キロ当たり29.95クローナ(円安なので約450円)、輸入品より約80円程高いのですが、値段表には国旗で印がつけられ、国産のりんごに人気が集まっているようでした。
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当国の場合、多くの果物や野菜はバラ売りで、買手が自ら選びビニールの袋に入れ、目方をその場でもしくはレジで計ります。果物売り場では国内産の赤いりんご「アロマ(Aroma)」、「サーラ(Sara)」と「ルビノラ(Rubinola)」が売られていました。サーラとルビノラは初耳なので、新品種なのかもしれません。りんご等果物の売り場は国内産、輸入品と分けていますが、日本のようにどこどこの地方産とまでは記されていません。多分、スウェーデンは土地が広く又人口が少ない上、野菜は温室育成も多いため、生産地までは記されないのでしょう。
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ちょっと余談になりますが、肉類では最近隣国のデンマークでサルモネラ菌が流行し、更にスウェーデンと異なり、ヨーロッパの一部の国々では家畜の健康保護に医薬のペニシリンを使用しているので、消費者としては心配です。特に牛肉の輸入品販売が急落したとも聞いています。
イーカのマキシで買い物をした後、今度は1キロほど離れたコープのエキストラに行きました。りんご等の果物売り場は、マキシと同じでバラ売り、目方を計る方法、国産、輸入品と分けていました。国内産のりんごの値段は、1キロ当たり29.90クローネとマキシとほぼ同じ、輸入品は半額位と安い値段でした。エキストラの方では、スウェーデンのりんごには「赤いりんご」とだけ記されていて、品名は記されていませんでした。
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ただちょっと気になったのは、輸入品で赤いりんごの品名が「りんごフジ」と記されていて、大きさも色もスウェーデン産の「赤いりんご」と殆ど同じで、多分中国産では?とも思いました。そう、以前当地のスーパーで梨が売られていたのですが、当地の梨の形は長くて日本の二十世紀梨のように丸く、あれっ!?と思い、よく見たら中国産と記されていたのでした。
今回も結局いつものように、甘みと歯ごたえのある国内産のりんごを買い家路につき着きました。
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2014年11月28日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰