第42号 春満開!スウェーデンの桜便り
弘前(青森県)の桜祭り、今年は4月23日から5月6日まで、東北一と言うより日本一の桜、その美しく咲きそろった桜を毎年見る事が出来る弘前の住民は幸せ者と言えるでしょう。北欧では、冬の終わりと共にシラカバの新緑が象徴的です。どこか桜の花が恋しくなるのは、筆者のように異国に住む邦人ばかりでは無いかもしれません。
桜と共に春に咲く多くの美しい花々は青春をも象徴しているのではないでしょうか?その中でもやはり桜……今回は当国の桜について書いてみたいと思います。
当国では、以前は桜の花と言うより果物のサクランボがむしろ主だったと思います。我が家も今から20年程前当地に住家を購入した時、庭には樹齢20年近くの桜の木がシラカバやモミの木と共に1本ありました。子供達にとっては木登りの遊び場、そして5月の始め頃になると、弘前に比べ1~2週間遅れて桜の花がまばらに咲き、花見と言うより緑の葉っぱの間に垣間見る感じでした。その桜の木に初夏になるとサクランボがなり、子供達は大喜びでサクランボを採って食べるのですが、鳥達も負けずに襲って来るものですから激しい競争です。
そんな我が家の桜の木ですが、ここ10~15年程か、日本の影響かはわかりませんが、桜の花があちらこちらでも見られるようになりました。勿論、お城、土手や池などに沿って植えられた沢山の桜でなく、一般家庭や公園等に日本の桜、あるいは桜に似た花が目を楽しませてくれます。
当地マルカリドの市役所正面にも6本程の桜の木が植えられていて、春には綺麗に桜が咲き誇ります。まさか筆者が役所で仕事をしているからでも無いでしょうが、入所してまだそんなに経っていない頃、役所の庭師ニッセと当時ポピュラーになりつつあった“日本庭園”の話をし、「桜の木でも植えたら面白いだろうね」と冗談気味に話し合いました。それから1~2年後には桜の木が6本植えられ、一時は1本折られたりしたものの植え直し、6本の桜の木は今も健在、5月の始め頃には綺麗な花を咲かせ筆者は毎年うっとりと眺めています。もっとも数年前庭師のニッセは定年で辞めてしまい、桜に見とれるのは筆者だけかもしれません。
スウェーデンで最も有名な桜は多分、首都ストックホルムの中心地 Kungstradgarden(王様の公園)ではないかと思います。周りがビルに囲まれた広場のような公園では、夏には噴水の周りにアイスクリームの売店、カフェや飲食店が立ち並び、冬の始めにクリスマスツリーが飾られ、その後、冬の間はスケート場となり家族連れで賑わいます。そんな憩いの場であるこの公園には20~30本位の桜の木が植えられていて、5月の始め頃には綺麗に桜が咲きほころびます。近年ではストックホルム市、ストックホルム日本人会、また旅行会社、航空社等が参加、協力し合ってちょっとした日本祭り、桜祭りが行われるようになりました。
今年は暖冬だっただけに、いつもより早く4月下旬には桜が咲き、首都に住んでいる長女から「パパ、花見に行って来たよ」と喜ばしいメールと共に写真が送られて来ました。太陽に憧れている北欧人にとっては、桜の花は冬の終わりと共に咲き誇る、春への開放感、そのきらびやかな美しさは、春の象徴、美の象徴かもしれません。日本では桜の花はその短い期間の咲きほころび、桜の散る様子を武士の儚さにも例えるのでしょうが……日本とはまた違う当国には当国の桜の花への感情があるようです。
2014年5月8日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰