第39号 スウェーデンのお墓と風習
青森市出身の父が7年程前に90歳で亡くなりました。父は浪岡出身の母とまもなく終戦を迎える時期に結婚、弘前へ移り家庭を築き、我々兄弟は弘前で生まれ育ちました。父が亡くなる10~15年程前だったか青森の三内(さんない)霊園、祖父母の近くに墓地を購入、夫婦の墓石も築いていました。
私は弘前が故郷とばかりと思っていたのですが、そんな父の青森への強い郷愁を見て、つくづく考えさせられました。今回はちょっぴり寂しいかもしれませんが、スウェーデンのお墓、又風習等について書いてみましょう。
当国の邦人や又知人等に「クドウ、どこへ骨を埋めるつもりだ?」と聞かれる事があります。既にスウェーデンに住み始めてから40年近く、人生の半生以上は南スウェーデンで暮らして来ました。4人の子供達も大人になり既に家にはおらず、家内と2人ガランとした家の中でぼんやり考える事があります。津軽、弘前への郷愁はあっても、自分の墓の事を思うと郷愁以上に父と異なり、実際問題として後生の人達の事を思い当地に埋めようかとも思ったりします。日本でのお墓、葬儀は大変な費用がかかりそうで、家内も子供達も日本の習慣は慣れておらず、現実には無理だと思ったりしています。
一方スウェーデンの場合、税金の一部が墓地税として約0.3パーセント含まれているので、墓地税により在住地での墓地が保証されています。広さは棺桶の入る大きさ、幅約1メートル長さ2.4メートルです。もっとも墓地を在住地ではなく、例えば他の墓地を希望する場合は、そちらに連絡すれば、墓地が空いてる限り無料で用意してくれます。
15年程前までは更に約1パーセントの教会税が義務づけられていました。教会税により墓地と共に、神父立ち会いによる教会での葬式も無料で保証されていました。現在では教会税は任意で国民の半数以上は教会税を支払っていないと聞きます。
キリスト教国のスウェーデンでは昔は土葬が中心でしたが、近代では火葬が中心で、土葬は2割程度です。都会では土葬が更に少なくなっているようで、南の都市マルメに住んでいて亡くなられた義母及び義兄も火葬でした。
話しは少しそれますがスウェーデンの法律では分骨は許されていません。しかし仏教徒にたいしては許されています。2年程前だったか邦人の知人が80キロ程離れた他の町で亡くなりました。私が日本人会の代表で又役所でも働いていたので少しお手伝いをしました。墓地は現地に保証されていたのですが、子供がいなかったので、日本の遺族の方から分骨を希望され、県庁に届けを出し承諾されたのを覚えています。
葬式の後は軽食会、亡人の想い出を語り合い親睦を深めるのは日本と似ています。7年程前だったか、マルメに住んでいた名誉総領事のニルス・ストームビー(Nils Stormby)さんが亡くなられ、葬式、軽食会に招待されました。ニルスさん、マルメでは市長も務めた大人物で、趣味としてワインを集めていました。在世中幾度か家に招待され、地下室の膨大なワインを見せて貰い、訪問都度に素晴らしいワインを飲ませて貰ったのを懐かしくも想い出します。教会での葬式の後の軽食会で、亡人の写真と共にワイングラスが飾られていたのがとても印象的でした。参列者の我々も赤ワイン、白ワインを飲み、想い出を語り合いました。
スウェーデンの墓地は市営あるいは、教会に付属していて、土地が広いだけに割りと広々としています。この週末に当地の墓地を訪れてみたら、花束が沢山飾られていました。多分数日前にお葬式が行われたのではと思われます。どこか寂しいながらも綺麗な花々が明るさを与えていました。
2014年3月1日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰