第33号 近くて遠い隣国「ヘルシンガー」
10月中旬、休みを利用し数年ぶりにスウェーデン南部の海岸町「ヘルシングボリ」から対岸の町デンマークの「ヘルシンガー」へ行って来ました。その距離はわずか4キロ程で両国間を挟むエーレスンド海峡をフェリーで渡りたった20分程の船旅ですが、ちょっとした外国旅行気分。15分おきに出るフェリーの利用客は、休日ともあって多くの家族連れで賑わっていました。フェリーへ乗り込み早速売店でデンマークの“ポルス”という赤いソーセージとパンを食べ、気持ちは既にデンマークにいるかのよう。今回は対岸の町「ヘルシンガー」について書いてみましょう。
スウェーデンからみるとデンマークは海を隔てた北欧の隣国。陸続きのノルウェーやフィンランドとは異なり、ドイツと陸続きでデンマーク人は北欧人と言うより、ゲルマン人と言った方が合うようです。ノルウェーやスウェーデン等とは異なり、天然資源が乏しく小国(日本の九州と同じくらいの面積だそうです)ですが、人口密度も高く世界屈指の農産物輸出国に成長し商業国、農業国とも言われてきました。本土は高い山が無く平坦で緩やかな丘が連続しています。言語のデンマーク語はドイツ語に近く、読むほうは何とかある程度分かるのですが、アクセントや抑揚が異なるので、聞き取りは慣れてないと何を話しているのか分からず苦労します。家内の祖母がデンマーク人だった為、彼女は殆ど問題無く聞き取りも出来るようです。
そんなデンマークの対岸の町「ヘルシンガー」へとフェリーから降り立ちました。町の様子や建築がスウェーデンとは異なり、カラフルな色の建物が目立ちます。また土地が平坦な事もあってか自転車が目立ち、道路も中央が車道、次は自転車道、そして一番の外側が歩道となっていました。どんよりとした秋の天気、狭い町の通りを抜け広場へと歩いて行きました。あちこちに酒屋が目立つのは、スウェーデンでは酒屋は国営で店の数も少なく、土曜日は半日のみ営業、日曜日は前日閉店なので、スウェーデン人相手の酒屋とも言えるでしょう。値段も少し安かったのではと思います。
「ヘルシンガー」の町外れの海岸沿いの岬。対岸にはスウェーデンを望み、その先に建つ「ハムレットの城」で有名なクロンボリ城があります。城へ行くには、以前は造船所をぐるりと周りを歩いたのですが、今回驚いた事に造船所は無く、造船場や建物を改築し、図書館、美術館、レストランやカフェとなっていました。
デンマークの建築は、独特なアーキテクチャー(建築)で、その大胆さと共に個性があり感心するほどです。その反面、お城が見え隠れするようで町のシンボルが薄れてしまうのではとも感じましたが、美術館を越えて着いた頃には大きいクロンボリ城が運河に囲まれどっしりと威厳ある姿で建っていました。
城からは対岸の「ヘルシングボリ」“スウェーデン”が間近に見られ、城壁の土手にはずらりと中世の大砲が並び、対岸に睨みを利かせていた。あるいは海峡を通る船を狙っていたのかもしれませんね。
城から中心街へ戻って来た頃にはお腹も空き、「魚でも食べたいなー。」とレストランを数軒見てみましたが、肉やソーセージはあっても魚料理が見つからず、あるいは私のデンマーク語が良くなかったのか…。結局、ちょっと横道に入った所にあった寿司屋“サチ寿司”に入りました。寿司を半年程食べてなかったので何となく恋しくもなっていたのでしょう。見た目はいかにも日本の寿司みたいで、店内もわりと奇麗だし美味しい寿司、日本食なのではと期待に胸をふくらませ注文しました。
ウエイターは少し色黒で東南アジア系の人のようです。気になって尋ねてみるとカンボジア人との事。後で分かった事ですがオーナーもカンボジア人だそうです。注文したミックスランチのご飯は細長い外米でちょっとがっくりしましたが、お腹が空いていたこともあり、わさびと共に焼きシャケのたれも美味しくて完食しました。“サチ寿司”はデンマーク全国に3店舗あるとの事で、12年程前に開店し首都コペンハーゲンに2軒、ヘルシンガーに1軒あるそうです。寿司屋は最近スウェーデンでもあちこちに出来ていますが、美味しい寿司はやはり首都のストックホルムあるいはコペンハーゲンまで行かなければ味わえないようです。
2013年10月24日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰