第31号　珍しい訪問者と晩夏の恒例行事

例年になく暖かかった夏も終わり、北欧にも秋が訪れています。夕方のひと時、外のテラスで夕食を摂っていたら親子連れの2匹のヘラジカ（Älg）が庭の外れにひょっこりと姿を現しました。さては、庭の外れにあるりんごの木を狙って来たのでしょう。我々はのんびり夕食を楽しみながら珍しい訪問者に見入っていました。ヘラジカ達も庭にあがるのは躊躇していたようで、我々とじ～っと睨めっこすること数分。やがて諦めたのか、また林へと戻って行きました。それから3、4日後の事、りんごの木の下に葉っぱや枝が散らばっており、親子連れのヘラジカは、我々がいなくなってからゆっくり晩餐会を楽しんだようでした。

毎年狩りが始まる初秋、鹿やヘラジカが民家の近くまで現れ、もう秋だなーと感じます。今回は当地も含めてのスウェーデンの各地で行われた夏の行事について書いてみましょう。

当地の名前はマルカリド（MARKARYD）、スウェーデン語の市場（MARKNAD）から由来してるのではないかと思います。当地の市場は昔からの歴史があり、以前は全国でも5本の指に入る程の大きさで有名でした。ところが近年では夏になるとあちらこちらの市町村で、市場あるいは、それに似た夏の催し物が全国的に行われるようになりました。人口1万人足らずのマルカリドの市場は現在では住民及び近辺からの訪問者で賑わい、恒例の地方の祭り、習慣行事となっています。それでも市場が行われる、9月の第1金曜日、土曜日には合計10万人近い訪問者で賑わうのですから、住民にとっては見逃せない晩夏の行事です。

筆者も土曜日の昼過ぎ、ノンビリと見学に行きました。あっちこっちで、「ヤー元気？」とか「クドウ、元気かい？」と短い会話。弘前の桜祭りの様に人だまりでごった返すので、立ち止っての会話はできません。それでも久しぶりに会いお互い微笑みあいながらの挨拶、出店、露天市場で賑わい、そして子供達用にチボリ（遊技場）があるので、弘前公園の様に桜や芝生が無いものの桜祭りに似ているかもしれません。

市場で欠かせないのはやっぱり食べ物です。ソーセージやハンバーグ、またドーナツなどと油っ濃い食べ物の中で人気があるのは魚のニシン料理です。ニシンの唐揚げをサンドイッチに、あるいはサラダを付けマッシュポテトと一緒に温かいニシンの唐揚げを食べます。出店での料理ですから簡単なものですが、これがまた、なかなか美味しくて毎年習慣の様に食べています。

一方、スウェーデン第3都市のマルメでは、夏にはマルメフェスティバルが約1週間、8月中旬、市の中心部で行われます。マルカリドのように長い歴史は無いものの既に20年以上の歴史を持ち、今年も盛大に行われました。マルメ市での場合、露店市と共にミュージックフェスティバル、音楽会があちらこちらの舞台で行われ、都会なだけに夜遅くまで凄い人混みで賑わいます。

金曜日の夕方、家内とマルメフェスティバルの見学に行きました。まずはビールで喉を潤し、人混みの中へ。バッタリ3、4年ぶりに知人に会ったりで、ちょっと雑談。更に人混みの中へ入って行きました。祭りは街の中心部で行われるだけに、あっちこっちのカフェやレストランも夜遅くまで開いていて、どこも賑わっていました。夜も遅くなった頃、長男と三女と連絡を取り、レストランで食事を摂る事にしました。長男の紹介で、フランス料理、フォンデュ（FONDUE）です。テーブルの真ん中の鉄鍋に油を熱し、串に刺した生肉を揚げ、野菜等と共に食べます。フランスでは生肉の代わりにチーズを浸して食べるのではないかと思います。揚げたての肉は、赤ワインにとてもよく合い、一層美味しくフェスティバル以上の思い出となりました。

2013年9月25日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰