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第20号 スウェーデンの秋景色

まだ夏の思い出が残っている昨今、今朝はマイナス3度まで下がり、身も引き締まってしまいました。そしてヨーロッパではこの10月最後の土曜日に夏時間から冬時間へと時計を変更。1時間前に進め、正常時間帯の冬時間に戻されました。昨日までは夕方6時に暗くなっていたのが今日からは5時には暗くなるのですから、ちょっとしたショックです。それでも野外は紅葉の盛り、自然の美しさに慰められています。今回は紅葉を含めた秋の様子を書いてみましょう。

秋の様子

スウェーデンは森林の国。山の少ない広大な自然で、水も豊富なので植林に適しているのでしょう。それだけに大きな製紙工場が全国あちこちにあり、そして製材所にいたっては規模が小さいながらほとんどの町、村にあります。一般住宅も木造が中心で、南部ではレンガ作りの家もありますが、中部から北部に行くとほとんどが木造です。家具も木製が中心となり、世界的に有名な家具メーカーのイケア(IKEA)がスウェーデンで生まれたのも、住んでいてなるほどと分かる気もしてきました。

紅葉

そんな森林に恵まれた国だけに、秋ともなると自然が衣替えした様に紅葉に染まってしまいます。夏頃までは緑の葉っぱで覆われていた森林が、一瞬にして印象派のゴッホが自然を塗りつぶした様に、黄色、橙、赤にと染まってしまい感動せずにはいられません。紅葉はシラカバを中心に、ハコヤナギ、カエデが主で、赤色は少なく黄色が中心です。もっとも、あまり紅葉を楽しむ習慣は当国には無く、日本の様に各地での紅葉祭りはほぼ聞かれません。それでも車で家内や子供達とドライブに出ると、「パパ、凄い紅葉だね。」と言われ、やっぱり皆自然の美しさには感動しているのだろうと今更ながら思ってしまいます。

紅葉の秋と共に、10月に入ると「森の王様」、ヘラジカ(スウェーデン名、エリエ、Alg)狩りの解禁です。全国に約30万頭いるといわれる野生動物のヘラジカが毎年その約3分の1が狩られます。ヘラジカは馬より背が高い位で、正に「森の王様」と言えるでしょう。

10月初旬、例年職場仲間の数人は2、3日休暇を取り、狩りへと出かけます。それぞれの猟地で親鹿、子鹿の数量が県庁から決められていて、それに合わせ狩られます。最近はあまり若い狩師は少なく、また女性もほとんどいないので中年男性層が中心の様です。ローカル新聞で、猟銃を片手に撃ち倒したヘラジカ、その角の大きさを誇りつつ前へ立った狩師の写真が見られるのもこの頃です。

この「森の王様」ヘラジカの好物はなんとりんごです。ボリュームがあり甘酸っぱいりんごは、ヘラジカにとっては最高なのでしょう。ところがりんごの木はほとんど野生でなく、住宅地に植えられていますから、下北のお猿さんでもありませんが、農家や住民にとっては大変かも知れません。我が家は町外れでもないのですが、庭の後ろはすぐ林で普段でもノロジカやリスなどが見られる所、ヘラジカも幾度か訪れて来ます。

ヘラジカに食べられたりんごの木
ヘラジカに食べられたりんごの木

丁度1、2週間前、庭の落ち葉を掻き集めていたらたった1本より残っていないりんごの木の枝が無惨にも4分の1程もぎ取られていました。数年前にも反対側が襲われていたので、ヘラジカの仕業か…とすぐピーンときました。早速家内を呼び「食べられた…」と言ったら、「ヘラジカがパーティーをしたみたいね…」と、呆れつつもしょうがないと言う感じ。柵や塀を作る程の事でもないし、りんごの木に限らず、野菜の葉っぱ等も食べられても、むしろ家の近くまで野生の動物達が来てくれる事に親しみを感じてるのでしょう。ヘラジカにはあっちこっちの住民からりんごの実や枝を食べられたと聞きますが、皆しょうがないと笑い飛ばしている様です。

2012年11月6日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰

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プロフィール

工藤 信彰
Nobuaki Kudo

1949年弘前市生まれ。大学時代に3年程休学し、ヨーロッパを旅したことがきっかけで、大学卒業後スウェーデンに渡る。スウェーデンにてルンド工科大学を卒業し、一般企業へ就職するが、経済学を学ぶため退職しルンド大学経済学部へ入学する。卒業後は1990年~2015年までマルカリド市役所勤務。マルカリド市議会議員(2006年~2018年)を経て、現在は環境党マルカリド党首及び、クロノベリ県議会執行役員を務めている。

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