第11号 バケーションの過ごし方
春になり、ゴールデンウィークも間近ですね。日本語では「黄金週間」とでも訳すのでしょうか。4月の終わりから5月初めにかけての大型連休は、ゴールデンと呼ぶにふさわしいと感じます。まして私の故郷では、日本一を誇る弘前城の桜がこのゴールデンウィークに見頃を迎えるのだから、たくさんの旅行者が津軽へと流れ込み、毎年大変な賑わいとなります。長い冬から解放され、はち切れる程に咲きほころぶ桜の花は絶世の美観。地元弘前の人々にとっては二重の喜びです。今回は、スウェーデン人のバケーションについて書いてみましょう。
労働法(休暇法)の上ではスウェーデンの有給休暇は年間25日、毎年5週間の長期休みが取れる事になっています。スウェーデンでは、家庭や健康の為に長期の休暇を取らせる習慣があり、6月から8月までの夏の間は4週間の休みを取るようにと、多くの職場で勧められています。そのため、生産工場等では夏の間3~4週間の期間、生産をストップし工場を閉鎖する所が多いです。スウェーデンでは休暇というより、大人になっても子供の頃の夏休みを満喫できるような、そんな風習があるといっても過言ではありません。高齢化を迎えた現代社会では、平均寿命が延びた事と共に定年年齢も向上され、スウェーデンでの定年年齢は15年程前までは65歳だったのが、現在では本人が希望するなら67歳まで職場に残っても良いと変更されました。余談になりますが、つい2、3ヶ月前、首相のフレードリック・ラインフェールト(Fredrik Reifeldt)が、本人が希望するなら定年を75歳まで延ばしてはどうかと発言して大変な話題となりました。肉体労働者にとっては、現在統計の上では62~3歳が平均定年年齢なので、労働組合からブルーワーカーを更に仕事へ強いるつもりかと批判もあり、裏には長寿による、年金基金不足への不安があったのではとも思われます。
我が家では子供達が小さかった頃は夏休みの1、2週間は隣のデンマークへ、あるいはスウェーデン西海岸へ、家やバンガローを借り海水浴や動物園、レゴランド(LEGO-land)で楽しみました。子供達がティーンエイジャーになった頃には、北スウェーデンやノルウェーの自然、また地中海までドライブに行ったけど、子供達が15、6歳頃からは、もう親とは同行せずそれぞれの友達と夏休みを楽しむようになりました。現在では我が家の子供達も大人になり、家には私達夫婦以外誰もいません。それだけに夏休み、バケーションは夫婦で気楽に旅行できる良い機会ともなっています。別荘を持っている人達はのんびり夏休みを別荘で、また、小旅行でもして楽しんでいるのではないでしょうか?中には庭いじりや家の簡単な修理、改築をする人もいるでしょう。いずれにしても職場を離れ、自らの自由時間を楽しむ、それがスウェーデン流の夏休みの過ごし方です。
去年の夏休みは末娘が中国にいたので、末娘と会うことも兼ねて中国旅行を楽しんできました。北京、西安から南部の桂林を訪れ、都会と田舎の差、大陸の中国人と島国の日本人との文化や風習の違いに驚かされるとともに、そんな中国で1~2年英語教師のアルバイトをしながら生活している末娘には今更ながら感心したものです。家内は不安でたまらなかったようですが。今年の少し早い夏休みはというと、家内と日本を旅行中です。九州、鹿児島へと寒さを逃れるように南下しましたが、こちらはすっかり春の陽気です。桜が散りつつありますが、あちらこちらで見ることができ、日本の美しい春を満喫しています。故郷弘前にも帰る予定です。桜の見頃はゴールデンウィークとのことで、日本一の桜を堪能していくことは残念ながらできないものの、慣れ親しんだ故郷に帰れるのが、大変楽しみな筆者でした。
2012年4月14日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰