第10号 夏時間のはじまり
欧米諸国など、緯度が高く夏の日照時間が長い地域では、夏時間(サマータイム)と冬時間(ウィンタータイム)が導入されています。欧米諸国での夏時間は毎年、3月最後の日曜日から始まり、1時間時計を前に進め、逆に冬時間は10月の最後の日曜日からスタートし、夏時間から1時間元に戻すというものです。
昨年3月11日に発生した東日本大震災による電力不足の影響で、日本でも夏時間(サマータイム)を取り入れ、出社時間を早めることで使用電力を節約しようという企業が多く見受けられました。日本で行われたものは出社や退社時間を早めたりと、欧米諸国のように実際に時計の針を進めたり遅らせたりするものではありませんでしたね。
ということで、今回は夏時間(サマータイム)について書いてみますが、皆さんは、どうしてこのようなことをするのか分かりますか?緯度が高く夏の日照時間が長い地域では、夏時間によって日中を1時間延ばすことで、電気代等の節約、また商店街も長い時間活気が続くため、経済が潤うとも言われているからです。その他にも交通事故や犯罪発生率の低下、余暇の充実を目的に実施されています。
冬時間では日本とヨーロッパ(フィンランド及びイギリスは別)の時差は8時間で、日本の皆さんが朝食や身支度を整えるために慌ただしく過ごしている早朝7時頃は、こちらでは夜11時と、多くの人が床に入る時間となります。しかし、夏時間では日本との時差は1時間縮まって7時間となります。スウェーデンに住みだした当初は、時差を間違えて計算してしまい、実家に夕方に電話を入れるつもりだったのが、間違って真夜中に電話を鳴らして両親を起こしてしまい、小言を言われたこともありました。
ヨーロッパおよび北米では、夏、冬によって時間を変更するというシステムですが、毎年2度ある変更日後には、どうしても体のリズムがおかしく感じてしまう人が多いようです。夏時間は3月最後の日曜日の真夜中2時に始まり、今年はつい先日の3月25日で、多くの国民はこの時間に合わせ、家中にある時計の針を1時間進めていく作業を行います。ですから、夏時間になった直後は1日が23時間に感じてしまいます。また、時間が変更となった当初は時間に関わる事を忘れると(仕事の約束や友人、知人との待ち合わせなど)大変厄介なことにもなります。私事ですが、25日の早朝、目が覚め時計を見たら既に8時過ぎ!!一瞬、「寝過ごしたっ!」とも思いましたが、「そういえば夏時間が始まったのだな」というのに気付き、早速早とちりしてしまいました。
スウェーデンの夏時間は1980年代から始まり、最初の年は4月の初めから9月の終わりまででした。その翌年からは3月の終わりから9月の終わりまで、そして1996年からEUの時間帯に合わせ3月の終わりから10月の終わりまでとなりました。夏時間で1時間損をしたと感じ、そして冬時間で1時間儲けたとも感じてしまうのですから、面白いものですね。
今年の夏時間最初の休日はとても天気が良く、日中は暖かで15度位まで気温が上がりました。昼過ぎ、50km程離れた隣の街ユングビーまでドライブ。この陽気のせいもあり、公園や広場のベンチ等でアイスクリームを食べている姿が目立ちました。この時期のスウェーデンは8時近くまで明るいので、自宅に戻ってからは外へ出て庭の掃除をしました。まだ3月の晩方ということもあり急に冷え込んできましたが、日中の陽気で、もうすぐ夏だなと思い、なんだか心までウキウキした1日でした。
自然界の動物のように、時間を体で感じ生きていくのが本来の生物の姿なのでしょう。ふと、私は、自分達の都合や利得のために、時間を操作しているのに、それに喜んだり、疲れを感じたりしている人間が少し滑稽に感じました。しかし、時間を有効活用するために、高緯度の欧米諸国特有ではありますが、夏時間・冬時間というものはやはり合理的なのでしょうね。今回はここまでです。次回もどうぞお楽しみに。
2012年4月4日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰