第6号 商業の街 “ヨーテボリ”での出来事
暖冬で迎えた新年ですが、ここ1週間程で寒さが厳しさを増し、当地南スウェーデンでも積雪が10センチを超え、湖面が凍りつくなど、辺りはすっかり白銀の世界に変わりました。日照時間が長くなったことに加え、一面真っ白に覆った雪の影響か、夕方5時頃まで明るい街並みが広がっています。今回は先週末、スウェーデン第2の都市ヨーテボリ(Goteborg)に行って来ましたので、街の様子などを綴ってみました。
※ヨーテボリは日本語では「イエテボリ」、「イェーテボリ」とも呼ばれています。
スウェーデンの首都、ストックホルムは人口が約80万人、東海岸に面し、海と岩に囲まれた街で、王宮とともに、国会議事堂や多くの官公庁、銀行など金融会社の本社が集中しています。一方、スウェーデン第二の都市、ヨーテボリは西海岸、北海へと続く港町で人口は約50万人、商業の街として知られています。車好きな人なら、世界的に有名なボルボ(Volvo)の本社がある街としてご存知なのではないでしょうか。また、市内には今も青い路面電車が走っていてどこか庶民的な雰囲気が残る街です。ストックホルムとヨーテボリは日本の首都である東京都(ストックホルム)と、商業・商人の街として知られる大阪府(ヨーテボリ)のような感じと言えば分かりやすいでしょうか。余談ですが、スウェーデンの総人口は約950万人、面積は日本の約1.3倍ですので、人口密度は日本よりずっと低い国です。
ヨーテボリは私の住むマルカリド市から北西へ約200キロの距離(ちなみにストックホルムは北東へ約500キロの距離)です。金曜日役所の仕事をお昼で切り上げ、家内と車でヨーテボリへと向かいました。天気も良く、なだらかな海岸線が広がる中、高速道路をひたすら北上しました。スウェーデンでは高速道路は無料です。制限速度は高速道路では110キロ~120キロ、人口が少ないため車の量もそれほど多くないので、運転は日本に比べ比較的楽に感じます。3時間弱走ったところで、ヨーテボリ中央駅前にある駐車場の建物へ車を停めました。
駐車場の建物にはショッピングセンターが併設されており、店内は金曜日の午後ということもあって、多くの人々で大変混み合っていました。派手な服装の若者達、背広姿のビジネスマン、お年寄りなどの買い物客でごった返し、この光景は世界中どこの都会やショッピングセンターも変わりないように感じます。そこで家内と別れ、まずは近くのカフェへと入りました。隣席のアジア人の若者達の声(おそらく中国語)をよそに、人々の歩く姿を見ながら、ぼんやりと夕刊に目を通し休憩しました。その後、ショッピングセンター内にある国営の酒屋(Systembolaget)へ入店。スウェーデンは隣国フィンランド同様、禁酒だった時代背景があるだけに、酒屋は全て国営で、若者は購入する際、身分証明書の提示を求められます。お酒を買えうのは20歳から、レストランでお酒を飲めるのは18歳からです。少し余談になりますが、家内に「何で酒をマルカリドの酒屋で買わないの?」と冷やかされることがあります。市会議員も兼任している身として、「お酒を買うために市内の酒屋に入れば、周りから白い目で見られそう…だからマルカリドを離れる度に購入している」というのが一番の本音です。
夕方6時に家内と落ち合い、夕食を食べるためレストラン探しをしました。どこも手頃な値段のお店は混んでおり、結局駅から少し離れたカフェ(軽食店)へ入りました。店内は若い人達が目立ち、かなり化粧をしていたので、夜はパーティーなど踊りにでも行くのかなと感じました。ストックホルム同様、ヨーテボリに若者が多いのは彼、彼女達の都会への憧れに加え、多くの大学や仕事場があるからだと思います。若者達を見ていると、弘前市の高校を卒業後、多くの友人達が上京していった姿が思い出されます。
食後、家路に帰るためパーキングへ戻ると、なんと車両後部の窓ガラスが壊されていました。車内に置いていた鞄が開けられていましたが、幸い中の物は盗られていなかったので、泥棒も慌てていたのでしょうか。それにしてもスウェーデンもここ10~20年、泥棒が多くなり、翌日土曜日のニュースでは当地のとなりの街、人口3万弱のユングビー(Ljungby)で金曜日の夕方に25件もの車上荒らしが発生したと報道されていました。家内が早速、警察へ電話を入れ被害を報告、警察も泥棒が多いだけに(?)現場の調査は行わず、被害報告のレポートを作成、我々被害者は後日、そのレポート番号を車の保険会社へ連絡する事になりました。これを見ると、スウェーデンは犯罪が多い国という印象を受ける方もいらっしゃると思いますが、スウェーデンの治安の良さは日本同様、世界最高水準とされています。凶悪な犯罪は比較的少ない国ですが、車上荒らしや窃盗、置き引きなどの軽犯罪は他国同様増えつつあります。
楽しかったヨーテボリの一日、最後の最後でとんだ目に遭ってしまいました。帰りのドライブは窓ガラスの代わりに貼ったビニールが、高速道路を走行中にバタバタという雑音を発する中、そして隙間から入る寒風によって家内と二人で肌寒い思いをしながら家路へと急いだ、ある晴れた金曜日の午後の出来事でした。今回はここまで、次回もどうぞお楽しみに。
2012年2月2日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰