第5号 Happy New Year 2012
皆様、新年明けましておめでとうございます。
さて、お正月もあっと言う間に過ぎ、日常の生活に戻っている方が多いのではないでしょうか。この1月は私の故郷、青森県津軽地方は例年に無い大雪と聞いています。一方、北欧はそれとは対照的に暖冬で、南スウェーデン当地のマルカリドは12月下旬から1月にかけて5~10℃とプラスの気温で、冬とは思えない天気が続いています。
前回は「クリスマスの食事」について書きましたが、今回は大晦日、新年の過ごし方について綴ってみました。
以前にもお伝えしたように、スウェーデンのクリスマスは家族で祝いますが、大晦日、新年は友人達と祝うのが一般的です。クリスマス同様、レストランや食堂が休みとなりますので、友達同士、誰かの家で宴席を設け、会食を楽しんで新年を祝います。
大晦日、新年の食事は海の幸がメインです。クリスマス程華やかではありませんが、小エビやザリガニを使った料理がメインとなります。ザリガニを食べると聞いて驚かれた方もいらっしゃると思いますが、エビによく似た味で大変美味しくスウェーデンでは人気の食材です。主食はジャガイモの代わりに食パン、白いパンのトースト、サラダ等が並び食卓を彩ります。昨年末の北欧は異常気象、暴風雨に何度か見舞われ、海の幸が豊富なスウェーデンでは漁師たちが出漁できず、年末のニュースでは、生の小エビやザリガニの価格がいつもの5倍以上になったと伝えられていました。
もっとも多くの市民にとって今は高価な生の海産物以外にも、お手頃な安い冷凍物も販売されていますので、生のものが無くてもそれほど困ることはありません。食事とともにいただくお酒は、海の幸に合う白ワインをいただきます。若者達にはビールや軽くアルコールの入ったサイダーが喜ばれているようです。そして、大晦日から元日に日付が変わる午前零時、シャンパンやスパークリングワインで乾杯し、新年を祝います。
日本ではNHK紅白歌合戦が大晦日定番の番組ですが、当地で大晦日恒例となっている番組は、スウェーデン国営テレビ放送の「伯爵夫人と召使い」(Grevinnan och betjanten)という、15分ほどのスケッチ、白黒のテレビ映画です。(映像を観たい方はこちらから →https://youtu.be/bM8gEgqTU84)この作品は歴史が古く、スウェーデンでは30年以上も前から毎年大晦日に放映されています。人々は内容の隅々まで知っているのですが、未だに根強い人気があり市民の中にはこの番組を見ないと大晦日を迎えた気がしないという方も大勢いるようです。
内容は、伯爵夫人と召使いの大晦日(以前は誕生日だったとも言われていますが)の食事会の様子が描かれています。出演するのは伯爵夫人と召使いの2人だけ、会食のテーブルには伯爵夫人(Ms.ソフィー)が居て、空席4席にそれぞれ客がいるよう仮定し、客役を召使いであるジェームズが務めます。前菜からメイン料理、そしてデザートと料理が出てくる度に夫人と乾杯し、お酒をすすめられてしまう彼は仕舞には飲み過ぎにより酔っぱらってしまうというどこか可笑しな内容の映画です。
脚本は1920年代のイギリス人作家のラウリ・ヴィリー(Lauri Wylie)で、英名は"Dinner for one"です。1948年頃から劇として見せていたそうですが、その後映画化され、スウェーデンでは1963年に国営テレビが放映権を取得し、初めて上映されたのは6年後の1969年と聞いています。
我が家でも大晦日は白ワインをいただきながら、妻と二人でこの番組をみて大笑いしました。この「伯爵夫人と召使い」はフィンランドやグリーンランド、オーストラリア、南アフリカでも放映されているようです。
年が明けた午前零時には、町のあちらこちらで新年を祝う花火が打ち上げられます。今年は薄霧に覆われた空模様でしたが、それでも爆音とともに打ち上がる花火を見ることができました。スパークリングワインで乾杯した筆者は、その後、新年早々二日酔いとなってしまいました(笑)。
最後に皆様にとって今年が素敵な一年となりますことを心よりお祈り申し上げますとともに、今年も当コラムをご愛読下さいますよう、宜しくお願いいたします。
2012年1月16日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰