甘酸の競演 "ジョナゴールド"
1943年、アメリカニューヨーク州農業試験場。「ゴールデンデリシャス」と「紅玉(英名ジョナサン)」のかけあわせから、新しい品種が産声を上げました。両親の名前にちなみ1968年につけられたその名は「ジョナゴールド」。日本では1970年秋田県果樹試験場にて栽培が開始、現在は主に青森県で生産され、次いで岩手県、そして長野県や福島県となっています。中生種のりんごを代表する人気品種のひとつでもあります。
「ジョナゴールド」は大玉の多い品種で、鮮明な紅色の美しい外観をしています。果肉は緻密でシャリシャリとした歯応え、さらに果汁も豊富で濃厚です。甘味だけではなく酸味も非常に味わい深く、甘味と酸味のバランスにこだわる方からは根強い人気があります。
「ジョナゴールド」の特徴の一つとして、果面がワックスを塗ったかのようにテカテカしていることがあげられます。もちろんこれは、収穫後人工的に何かを塗ったのではなく、この品種が遺伝的に本来持っている性質なのです。
りんごは熟度が進むと、リノール酸やオレイン酸といった不飽和脂肪酸を分泌します。それらが果皮に含まれるメリシン酸やノナコサンという固形物質を溶かすことによって、果皮の保護をし鮮度劣化を防ごうとしているのです。「油あがり」と呼ばれるこの現象は「つがる」「千秋」などにも多くみられますが、「ジョナゴールド」は他に比べてこの不飽和脂肪酸の分泌量が多い品種です。不飽和脂肪酸は栄養価が高く注目されているもので、食用上全く問題ありません。むしろこのワックス状の不飽和脂肪酸が出てきたら、りんごが熟し食べ頃だという目安なのです。
収穫は10月中旬~下旬が最盛期ですが、「ジョナゴールド」はりんごに袋がけを施して育てることが多いため(※)、無袋で育てたりんごに比べ長期保存が可能で、他の中生種よりも長く味わえます。最近では生食以外にも、親木である「紅玉」譲りの酸味を存分に生かし、お菓子や料理の材料として使用されることが多いです。「煮ても焼いても生でもよし」の、非常に魅力的な万能品種といえます。
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